一体何が正しいの?釧路独自の交通ルールを徹底解剖!~幣舞ロータリー編~
「あそこ、どうやって走ればいいの?」——釧路に引っ越してきた人が一度は口にする言葉があります。
その場所とはズバリ、幣舞ロータリー。

信号なし、停止線なし、それでいて交通量は多く、初めて遭遇するとあまりの不案内さに頭が真っ白になるあの場所です。かくいうワタクシも、タイミングが読めず円形をぐるぐる周回して白い目で見られたことがありました。
極意を求め、いろんな人に聞いて回りましたが、誰に聞いても返ってくるのは「なんとなく流れに乗ればいいんだよ」という一言。
ごめの目では、この〝なんとなく〟の正体を道警釧路方面本部交通課の協力のもと、徹底解剖していこうと思います。
これは普通のロータリーではない
幣舞ロータリーは、見た目は立派なロータリーで、標識もさりげなくあったりするのですが、現状「ロータリー交差点」でも「環状交差点(ラウンドアバウト)」でもありません。
構造としては、「直線道路に4つの交差点が接続している形」と考えるのが最も近いとされています。

一般的なロータリーとの違い
表にしてみました。
| 項目 | ラウンドアバウト (環状交差点) | ロータリー交差点 |
| 定義 | 道路交通法で定義された交差点 | 法令上の定義なし(一般名称) |
| 基本構造 | 環状の通行部分を一方向に循環する | 中央島の周囲を循環する交差点形式 |
| 通行方向 | 標識により時計回り通行が指定 | 必ずしも統一されない |
| 優先関係 | 環道内の車両が優先 | 進入車が優先 |
| 信号機 | 通常は設置しない | 設置される場合がある |
| 標識 | ![]() | ![]() |
| 制度導入 | 2014年(道路交通法改正) | 旧来から存在する交差点形式 |
幣舞ロータリーは一般的なロータリーと違って、進入車が優先ではない・時計回り通行なんてもんじゃないということで、「普通のロータリーではない」と言わざるを得ません。
ルールが明確に定義されていない、というのが最大のグレーゾーンなんですね。 そのため運転はどうしても状況判断に頼ることになります。
どう走る?基本の考え方
前提として、北大通⇔富士見坂の直線が実質的に優先とされています。
この2方向は比較的スムーズに流れます。
初心者をビビらせるのは、円形に接続する出入りです。

円形側から侵入する場合
北大通側から円形に入るときの基本は、左から来る車と歩行者を確認して進むこと。
円形付近に白いラインが引かれていますが、これは一時停止線ではなく、衝突を避けるための目安と考えられています。進めると判断したら、ためらわず流れに乗る。判断の早さが、ここでは重要になってきます。

円の内側で待つ車はまさに「タイミングを見極め、勢いでGO!」。
分岐側から主幹道路に入る場合
一時停止標識がある場所では必ず停止します(キャッスルホテル沿いの道路)。それ以外は歩行者優先を守りながら、タイミングを見て進入することになります。
この時にヒヤリとするのが、車線またぎ。お堅いことを言いますと、本来は「最も近い車線(図だと左車線ですね)に入ってから車線変更」が正しい手順なのですが、現実的にそこまでの余裕がない場面もあります。
特に北大通へ向かう下りの車線を走る際は減速を心掛けましょう。

ウインカーは上げる?上げない?
ウインカー(方向指示器)とは、「これから自分はこちらの方向に進みます」と周囲のドライバーに伝えるための合図です。当然ながら車線変更時には必要なものです。どこであろうとも、この基本は変わりません。
ただし、このロータリーは前述のとおり「ロータリー交差点」でも「環状交差点」でもなく、法律上の明確な定義がない場所。ウインカーを出さなかったからといって、取り締まりの対象になるわけではありません。
多くの人は矢印の方向にウインカーを挙げますが、直線なのかそうではないのかの曖昧な判断はドライバーに委ねられます。そのためウインカーを出す人も出さない人も混在しているのが実態です。
ちなみに、富士見坂から下りてくる車がたまにウインカーを出しているのは、昔の名残。かつて富士見坂が一車線だった時代、坂を降りてきた車は1車線から3車線に合流するため、ウインカーを出す必要がありました。道路が改良された今もその習慣が残り、ウインカーを出す世代が一定数いるのだとか。
釧路の道路の歴史が、運転習慣にまで染み込んでいるというわけです。
なぜ、こんな構造になったのか?
2009年3月の釧路新聞にこんな記事を見つけました。

幣舞ロータリーが完成したのは1956年(昭和31年)6月28日。4代目幣舞橋の時代のことです。円形部分の直径はわずか20メートル。国道・道道・市道合わせて6本の道路が放射状に延び、しかも管理者が国・道・市とバラバラ——この構造が、今の「グレーゾーン」の遠因ともいえます。同年12月には富士見坂の拡張で五差路になったことも記されていました。
背景には、道路の整備時期と交通ルールの整備時期のズレがあります。道路は昭和初期の整備、交通ルールはその後に体系化されました。加えて、道路構造を所管するのは国・自治体、交通ルールを定めるのは警察と、制度として別々に動いてきた経緯もあるのです。
その結果、現在のルールには完全に当てはまらない構造が残り、「目安ライン」のような曖昧な運用が生まれました。歴史の積み重なりが、今のグレーゾーンを生み出しているのです。
結局のところ、どう走ればいいのか
改めて整理しますと、①法律で明確に定められた走り方はなく、②幹線国道38号の直線に当たる北大通⇔富士見坂の直線が実質優先、③周囲を見て譲り合うことが大前提——この3点に尽きます。
こうして見ていくと、「流れに乗る」という言葉も、決して無責任な助言ではないことが分かります。
そこには、直線側の優先や歩行者優先といった前提を踏まえた上で、周囲の車両の動きを見極める判断が含まれています。
つまりこの場所では、標識や明文化されたルールではなく、「周囲の状況を読むこと」そのものが運転の基準になっているといえましょう。
少し不親切で、でも妙に機能している。それがこの町のロータリーなのです。






