特集記事 レトロなお惣菜
公開:2026/08/05

表記に従っただけなのに――レトロなお惣菜第7回「和風コロッケ(揚げまんじゅう)」

古き昭和の時代の食卓を再現するのが意図のはずのこの企画が、だんだんと料理失敗顛末記になりつつあり、方向性をたださねばなるまいと思うだけは思っている。

気を引き締め、昭和のお母ちゃんの気持ちになって真心のこもったお惣菜を届けたい。

1956年(昭和31年)4月8日の釧路新聞2面より切り抜き

春の香り豊かな生しいたけ、根三葉、とろろいもとある。
しいたけとは年中売っているものという認識が強すぎて、旬があるとは知らなかった。
調べてみると、原木栽培の生しいたけは春と秋の2回も旬があるらしい。年間を通してスーパーに並んでいるやつらは菌床栽培のしいたけのようである。

次々と脱落する本来の材料たち

今回の材料はこちら。
豚ひき肉四十匁=150gに値するパックがなく、合いびきとなった。
じゃがいもととろろいもが半量ずつとあるが、とろろいもなど事故の予感しかしないので、安全策を取ってすべてじゃがいもとした。最後に「じゃがいもだけでもよろしい」とあるのでよろしいはずだ。
さやいんげんは、ただのいんげんに変更。パック詰めされたさやいんげんはあまりに貧相で頼りなく土気色をしていて、しのびなかったのだ。
しいたけは、もちろん菌床栽培である。

結局1個が中腐れのため、このグラム数も当てにならず

じゃがいもは全部で百匁。目分量には頼らず375gを計る。画像ではあと40gほど足りていないが、それは全部乗り切らなかっただけなのでご容赦を。

使うのが申し訳なくなってくる

それにしても三つ葉のなんて貧相なことか!
このひょろりとした一把で158円とは泣けてくる。
「根三つ葉十本くらいを入れ」という指示があるが、十本にも満たない。

全部刻んでも三つ葉はこの量。春の香りは残念ながら薄い

この卵、何のため?

じゃがいもはゆでて潰す。前回の生煮え騒動の反省を踏まえて、ぼっこぼこにゆでる。潰す。

ここに卵を1個割りほぐして混ぜる。たまご…?

この卵が果たす役割とは一体何なのか。
つなぎなのか、色付けなのか、味に作用するのか、一体何なんだ。
答えが分からぬままに1個を全部入れたところ、じゃがいもがクリームになってしまった。

待て待て、これに餡を入れて成形するとか無理じゃろが。

もったりというかとろりとクリーム状に。合ってるのこれ?

たくさん練ってみるも、特に化学反応は起こらない。
冷やせばいいのかと思い付いたのはだいぶ後のことであった。

肉汁との攻防

おまんじゅうの餡となるひき肉部分に着手。
調味料の細かい分量は書かれておらず、勘に頼るしかない。味見は忘れずに行う。ちょっと濃いけどまあいいか。

次から次へと出てくる肉汁たち。これ、どーすんの?

しかし、こんなに汁気が残っていていいのだろうか。
いくら料理音痴な筆者でも、コロッケは水分が多いと破裂するくらいの知識は持っている。

ということで、中の具材はキッチンペーパーの上に避難。
分量を守っているつもりだが、ずいぶん多いな…

もはや見てくれなど構っていられるか

成形する時が来た。
じゃがいもは少し冷えて締まってくれたが、手のひらの上で扱える状態ではない。
ここに、小麦粉か片栗粉を足すことができたらかなり違うだろうに。ああ、卵の水分が憎い。

もはや何を作っているのか分からなくなっている

中に包む具材が大量にあり、到底8センチの大きさに収まるものではない。生地も扱いづらいためサランラップ作戦に出る。
大型の手鞠おにぎりでも作っている気持ちになる。いや、茶巾の方が近いか。

とりあえず丸めるだけ丸める。もう形などどうでもいい。
そして危惧していた通り、中の具材がかなり余ってしまった。
本当にこの分量でちゃんと作ったんですか喜代さん!

揚げてしまえばこっちのもの

ここからはためらい禁止の勢いモードである。

ここまでくればゴールは見えている

もたもたしていると手の中でコロッケ(とおぼしきもの)が崩れそうなので、サランラップをはがす→卵液にどぼん→パン粉の海へダイブ、の作業を繰り返す。衣に守られたコロッケ(らしきもの)はもう安全だ。

レシピの通り、材料は火が通っているのできつね色にするだけでいい。
どこからどう見ても、ただのコロッケである。誰も揚げまんじゅうとは思うまい。

からりと揚がったコロッケは壮観

お約束、発生

さて、コロッケは揚がった。色とりどりではなく彩りのいんげんもおまけ程度に添えた。

ここで、うすあんを用意していなかったことに気付く。

うすあんとはなんぞや

おそらくはだし汁に調味料を加えたゆるい餡なのだろうと推測するも、もうだし汁を作る気力が残っていない。

ここは現代人の伝家の宝刀「めんつゆ」に出陣してもらおう。
そして三種の神器「電子レンジ」にも活躍してもらおう。
どちらも70年前にはないもので…と思ったら、めんつゆは1952年に開発されていた。ただ、全国的に普及が始まったのはもう少し先の1960年頃である。何にせよ喜代さんはめんつゆなど使ってはいないだろう。
電子レンジの普及については1970年代と、まだまだ待たねばならない。何にせよ(以下同

まあ、当然こうなるよね

一応Google先生に聞いてはみたものの、適当という名のさじ加減はマイナス方向にしか働いてはくれず、あんゼリーが誕生した。
見た目的にはめんつゆジュレとフォローできなくもないが、ただの粘着質な塊である。

まんじゅうの概念はどこへ

ご立派なコロッケが皿に乗った。いんげんもいい脇役である。かき集めたうすあんもどきが甲斐甲斐しい。

中を割ると、じゃがいもの中に苦労して詰めたひき肉の具がぼろぼろとこぼれた。

…ん?

普通にコロッケである。まんじゅうの要素はどこにもない。

コロッケの中にひき肉の具が入っており、つまりはただのコロッケであった。まんじゅうも、和風の要素も残念ながらどこにもない。
爆発を恐れて徹底的に水分を排除した具がパサパサで、生地に混ぜ込んであるか否かくらいの違いしか分からない。

じゃがいもに卵を入れた意味は何だったのか、食べてみてもよく分からない。ほのかに生地が黄色い気がする程度である。

もちろんコロッケとしては揚げたてで上等においしいものだった。
1人前(1個)210円。買った方が、安い。(編集部:ごめのすけ)

こんな一皿を期待していた
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