世界を歩いた眼差しに触れる場所。釧路・新富町「長倉商店塾」のミニ講座に密着!
川北通を釧路町方面へ進み、一本中通りに続く新富町。
その静かな住宅街の一角にあるのは「長倉商店塾」。
手書きの看板がかかった建物を見て、ここは一体何だろう?と思った方もいらっしゃるはず。
外観は素朴な商店ながらも、実はここが、世界中を巡り、歴史の最前線や辺境の地を撮り続けてきたフォト・ジャーナリスト、長倉洋海さんが主宰する「長倉商店塾」です。
(※講座開催時のみオープン)

かつては商店だった
かつて長倉さんの両親が実際に切り盛りされていた「長倉商店」の建物を改装し、2015年に開講したこの塾は、現在ギャラリースペースとして、また、長倉さんが写真を通じて実際に見てきた世界の姿を次世代へと伝える学びの会場になっています。
主な活動は夏の集中講座ですが、不定期で少人数対象のミニ講座も開催されており、今回はその講座「ミニ塾」の様子に密着しました。
プロの視点から見る「写真」の本質
講座は午前と午後の2部構成で進みます。午前の部は、参加者が持ち寄った作品を長倉さんが講評するフォト・セッションから始まります。
この日は秋に開催される塾生写真展の出展予定者たちが、選りすぐりの作品を手にややそわそわしている様子。周りの人たちは期待感に満ちて見守っています。
テーブルに広げられた作品を一目見た長倉さんの第一声は「メインになる写真がないね」とバッサリ。
組写真(※1つのテーマを複数枚の写真で表現する手法)としての構成に対する、早くも厳しい指摘のようです。リスかわいい!などと無邪気に感動している素人(筆者のこと)は早くも置いてけぼり。
続いて提出された作品にも「インパクトがない」「きれいに撮りましたではダメ」と、辛口の講評が小気味よく炸裂していきます。

こうした厳しい言葉が飛ぶたびに、会場には重苦しい緊張感……ではなく、納得のため息があちこちから漏れていました。
だんだんと場が和んでくるにつれ、塾生同士でも構図や撮り方についてお互いアドバイスが飛び交います。聞いているだけで、ちょっと写真やってみたいな…と好奇心がうずきます。
「ダメだと言われたなら、何がダメなのか、なぜダメなのか。それを自分自身で考えること」
長倉さんが繰り返し強調していたのは、ただシャッターを切っただけの写真には物語が欠けており、撮影者の個性や視点が見えてこないということ。
写真とは単なる記録ではなく、撮影者の「眼差し」そのものが写り込むものだという哲学を垣間見た気がしました。
一方、厳しいばかりではありません。「広がりがあった方が◯◯さんらしい写真になる」「このフレーミングは面白い」など、それぞれの作品の良さや可能性に対しても丁寧に言及します。
集まった参加者たちは、真剣な眼差しでその一言一句に耳を傾けていました。
こうした厳しくも温かい指導を経て、これらの作品が写真展本番でどのような姿に変貌するのか、今から非常に楽しみです。

なお、今回の参加者の最年少は中学1年生。大人たちと肩を並べて真剣に講評を受ける姿は印象的で、若さゆえの独特な感性は、ベテランにはない新鮮な色彩を放っていました。

世界を巡る写真家の眼差し
昼休憩を挟み、午後からは長倉さんのフリートークの時間です。
長倉さんが世界各地を巡って出会った人々や、その土地の空気感をスライドと共に語ってくれます。
今回は、ブラジルで開催されている巡回写真展の現地イベントに参加してきたばかりの長倉さんが、その体験をスライドを交えて報告しました。長旅の疲れもどこへやら、話し始めると止まらない様子です。
世界を股にかけるジャーナリストのお茶目な失敗談に笑いを誘われつつも、環境破壊の問題や自然、ひいては地球との向き合い方について深く考えさせられる時間となりました。
遠い異国の地での出来事、そこで感じた空気、出会った人々との交流。具体的なエピソードを交えながらも、見えてくるのは環境や文化、そして人間の生き方についての普遍的なテーマが静かに横たわっています。

遠く離れた場所の話でありながら、それが決して他人事ではないことを、参加者たちは肌で感じ取っているのでしょう。
視点は世界から地球全体へと広がり、壮大なスケールでありながら、どこか自分自身の生き方にも深く関わってくる、そんな不思議な感覚がありました
また、海外で写真展を開催する際の苦労話や、現地の美術館を訪れた感想なども語られ、あっという間の2時間が過ぎてしまいました。もっと聞きたい!

おまけ:展示写真の中に写っていた少年が、大人になって作品の前に立つという「本人登場」のミラクルショットに塾生たちからは大歓声。
知的好奇心を刺激する空間
外観は素朴な商店ですが、一歩中に足を踏み入れると、そこは別世界です。
壁一面を埋め尽くす写真作品、棚にぎっしりと詰まった書籍、世界各国から集められた民芸品や置物。それらが雑然としながらも不思議な調和を保って並んでいます。
商店塾に集うメンバーは、写真技術を追求する愛好家というよりも、長倉さんの思想や生き方、世界観に共鳴し、長く寄り添い続けてきた人たちという印象でした。著作にも親しんでおり、その歩みを見守り、応援し続けてきた存在といえる方々でした。
カメラの専門的な使い方を学ぶこと以上に、長倉さんのフィルターを通した「世界の見方」を共有し、自分自身の世界観を広げたい。そんな熱い想いに満ちた温かい空気がこの場所にはあふれています。


今後の予定
長倉商店塾では、今後もさまざまな講座が予定されています。
夏期集中講座では2日間にわたり、長倉塾長の豊富な取材体験を写真スライドとともに追体験することができます。単なる講義ではなく、参加者自身が考え、対話し、ともに世界を巡る旅のような時間が用意されています。
全国から参加者が集い、涼しい釧路という土地で交流を深める機会にもなっているそうなので、新しい出会いにも期待できそうです。
また、写真技術を本格的に学びたい方向けの特別講座も予定されており、詳細は公式サイトやSNSで随時告知されますのでぜひチェックしてみてください。
長倉商店塾が提供しているのは、単なる写真技術の習得ではありません。写真を通じて世界を見る目を養い、自分自身の視点を持つこと。そして、その視点を次世代へと繋いでいくこと。そんな大きな学びの循環が、この小さな商店の中で静かに育まれているように感じました。
ごめの目編集部も今後の新たな動きに注目し、また足を運びたいと考えています。
(編集部:ごめのすけ)
- 会場
- 長倉商店塾
- 運営
- 長倉商店塾を応援する会
- 住所
- 釧路市新富町16-12Google MAPで見る
- 電話番号
- 事務局080-4504-1119(17時~21時)
- 時間
- 講座開催時のみオープン、講座時以外の来場はご遠慮ください
- 駐車場
- 駐車場はありませんので、公共交通機関などをご利用ください
- アクセス
- 川北交番から共栄小へ向かい徒歩1分
- 公式サイト
- 長倉洋海ホームページ




