特集記事 レトロなお惣菜
公開:2026/05/05 更新:2026/06/02

奇想天外な工夫の理由に衝撃・レトロなお惣菜第3回「即席カレ-」

レトルトカレーがないなんて

1956年(昭和31年)5月23日の釧路新聞2面より切り抜き

「即席カレー」のタイトルを見た瞬間、今回は楽なカードを引いたぞとほくほくした。これまでのようなハイカラモダン風な造語ではない、カレーはカレーである。しかも即席ときた、これはもう勝ったも同然ではないか。
しかし、材料や作り方を見て「ほんまかいな」という疑いも生じた。カレーが食べたいのならレトルトカレーで十分なのでは?即席カレーライスの需要とは一体?と考えたところで、思いも寄らない事実を知る。

2月12日はレトルトカレーの日であるという。
由来は1968年(昭和43年)に大塚食品の「ボンカレー」が発売された歴史にある。
つまり、である。
この新聞が発行された昭和31年はまだレトルトカレーというものが存在していないのである。袋を温めれば済む時代の到来まであと12年も待たねばいけないのである。

衝撃の事実を知ったところで、70年前の即席カレーを作ってみたい。

材料の少なさに不安の予感

カレー粉は家にあったものを使います

材料はこちら。
昭和31年のコロッケは1個10円だったのだろうが、令和8年のコロッケは1個108円である。とはいえなかなかの大きさなので適正価格、むしろ安い方であろう。大手スーパーの中ではコロッケは生協が一番おいしい(偏見)。

この完成された惣菜・コロッケを使ってカレーらしきものを立ち上げる作戦らしい。簡単そうに見えて3種類のバリエーションがある。なにげに手間はかかりそうだ。

油の量は不明なので小さじ1ほどにしてみた

大さじがカレー粉の缶に入らず、盛大に粉をこぼし早くも戦意喪失である。一度でいい、トラブルなく料理というものを遂行してみたい。
油の量は書かれていないので小さじ1ほどにしてみる。
カレー粉は油で炒めると香りが引き出されて本格的な風味になると聞いたが本当だ。そこにコロッケをちぎり込む。

コロッケにひたすら謝り続けた

完成された惣菜をこの手で引きちぎる謎の罪悪感が半端ない。コロッケの存在意義を真っ向から否定しているようで、ゴメンヨゴメンヨと謝りながら投入する。すぐに水5勺(90ml)を投入。

よくかきまわすと確かにどろりとしてくる。
そりゃ芋だもの。
ただ、カレーと呼ぶにはどろりというかもっさり。

これで完成とはなんというあっけない幕切れ。確かに、即席という言葉に嘘偽りはない。

丁寧バージョンも作ってみる

せっかくなので丁寧バージョンも作ってみよう。
工程はほぼ同じ。

やっぱりコロッケをバラバラにすることに抵抗感がある

簡単な調理に見せかけて、バリエーション別に3皿分を作らせる鬼のレシピである。
水の代わりに牛乳を入れるとぐっと色が黄色みを帯びて、根拠はないが昭和っぽい気がする。
今では死語になりつつある化学調味料、現代のうまみ調味料を1振り入れて練る。正解がよく分からないのでこんなもんかというところで火から下ろす。
見た目は少しなめらかになったが、やっていることはただコロッケをつぶしているだけである。ゴメンヨゴメンヨ。
コロッケへの冒涜感は2皿目でも薄れない。

応用編、玉ネギを加えたら

さらに応用編の玉ネギ追加バージョンもやってみよう。
手順を守り、玉ネギは先にバターで炒めて別皿に上げておくのが正解だった。
面倒くさがり根性で玉ネギを炒めたところにカレー粉を入れてしまい、カレー風味なナニカになってしまったことを告白しておく。

横着していっしょくたにしたところ、風味が薄まってしまった

3皿を食べ比べ

さて、3皿ができたところで食べてみよう。
要領の悪さに加え、盛り付けのセンスのなさはどうかご容赦いただきたい。人には向き不向きというものがあるのだ。

左から水だけ、牛乳Ver、炒め玉ネギVer

ふと気付いたが、作ることと写真を撮ることにいっぱいいっぱいになっていたせいで、味見というものを忘れていた

ということで。

  全体的に「味がない」。

まず、シンプルに水だけで作ったカレーは少しジャンクな風味がする。コロッケがまとう衣と油の匂いのせいかもしれない。
カレー粉の香りはしっかり付いていて、しかも結構辛い。コロッケ由来のとろみもまあ、なくもないが、ごはんに載せて「カレーライス」にしようと思える決定打に欠けている。塩やソースで創意工夫されることをオススメする。

牛乳で練ったカレーは3皿の中で一番おいしい。お子様カレーの味になるかと思いきや、カレー粉の角が取れ、芋感が引き立ち、ハイカラなマッシュポテトのようだ。
味の素をもう1~2振り、塩コショウ少々を足すとかなり化けそうな気がする。

一番手間をかけた玉ネギカレーは、残念ながら調理工程を誤ったこともあり、ぼやけた味となった。バター炒めの玉ネギが中途半端に主張して、カレーの風味はしおらしく隠れている。カレー粉だけでなく他のスパイスや調味料でもう一工夫が必要である。
手間をかけたものが一番おいしいとは限らない。料理とはなんと非情であることか。

昭和中期の即席カレーを食べてみて

塩分が足りなかったため、ごはんにかけて食べるおかずにはならなかった。
どちらかというと進化型マッシュポテトといったところである。パンに乗せ、カナッペやブルスケッタとして食べればかなりの及第点だろう。

しかし、レトルトカレーがまだ存在していなかった時代に、手元のコロッケを使ってカレーらしきものを作ろうとする発想はなかなか豪胆、まさに奇想天外である。
昭和の台所らしい知恵と工夫を垣間見たところで、味見はしようと反省をした。そして、もうしばらくはコロッケへの謝罪が続きそうである。(編集部:ごめのすけ)

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