特集記事 レトロなお惣菜
公開:2026/10/04

和食か洋食かはっきりして!レトロなお惣菜第10回「ちぎり豆腐」

昭和30年代のレシピ再現企画。

映えるハイカラ惣菜はどれかな?と、過去の連載リストを眺めては唸ること数日間。

やばい、全然決まらん!どれも映えん!こうなったらインスピレーションで決めるしかあるまい。

…で、ビビビと来たレシピがこれである。

1956年(昭和31年)6月16日の釧路新聞2面より切り抜き

……。

さんざん迷った挙句に「ちぎり豆腐」。

映えとは真逆な上、文字面のどこにも旨そうな要素が見当たらない。(しかも記念すべき(?)第10回なのに)

われながら、なぜこれをチョイスしたのか謎である。

きっと深層心理では「工程がラクそう(ちぎって丸めるだけ)。あわよくば変わり種コロッケとして成立するのでは?」という甘い期待もあったのだろう。

まあ理由はいい、ともかく作ってみよう。

本当にちぎって丸めるだけ?

材料はこれだけ。

まずは豆腐一丁を水切りしよう。

世の料理上手な皆さんは、どうやって水切りするのだろうか。

筆者はキッチンペーパーに包んでボウルに入れ、上から重石を乗せて数分放置スタイル。

重石は適当な器を使っている(なぜか乗せる前に撮影してしまった)

重石を乗せて数分置くも、結局大して水が切れておらず、手でぎゅっと握り潰すほうが景気よく水分が噴き出た。豆腐の水切りは「力技」に限る!と毎回思うのは筆者だけだろうか(手で絞ると大豆の旨味も一緒に流れてしまうとか?)

「ちぎり豆腐」のタイトル回収。

続いて、フライパンで牛ひき肉を炒める作業に入る。

牛100%ひき肉が売っていなかったので豚牛の合い挽きを用意。

レシピにはひき肉の分量が一切書かれていないが、とりあえず218gのパックを買ったが…多いのか少ないのか分からない。

油を薄くひいて炒めます。

炒めた後は「化学調味料を加える」の指示。今でいう「味の素」的なアレのことだろう。

ところで味の素の化学調味料(うま味調味料)っていつから存在するんだ?と気になって調べてみたら、発売はなんと明治42年。中瓶30gで50銭だったそうだ。こんなに長く愛用されていたことにびっくり。

そして企業としてのajinomotoは現在、AI半導体材料事業で世界的なシェアを誇っているらしい。知らなかった!

さて、わが家の調味料ストックを掘り起こすも、味の素が見当たらなかった。代用品は…なんだろう。料理上手ならすぐに思い浮かぶであろう。

私は迷わずネット検索。

和食→「昆布だし、カツオだし、白だし」中華→「鶏ガラスープの素、ハイミー」洋食→「コンソメ、粉チーズ、トマト」

とのこと(まぁそうだよね)

果たして「ちぎり豆腐」はどのジャンルに属するのか。ミートコロッケ風なら和食か?だがここでトンチンカンな調味料を投入すれば、怪作が誕生する未来しか見えない。

試しに白だしを嗅いでみたが、カツオの風味が主張しすぎて「コレジャナイ」感がすごい。迷った末、コロッケ寄りの発想で「コンソメ」を一振り投下することにした。これを冷ましている間に、揚げ物の準備を進めよう。

コンソメの他、レシピに従い塩コショウも少々。

揚げ物に恐怖心があるのは珍しいですか

幼少期から「揚げ物は危ない。あんたはそそっかしいから火事になる」と言われて育った筆者は、揚げ物には人一倍恐怖心を感じている。

あの、どんどん油の温度が上がっていく緊張感。パチパチとした音がまた拍車をかけ、まるで発火へのカウントダウンのようなのだ。

なのでわが家は、もっぱらノンフライヤーを使っている。現代文明の利器万歳だ。今回のレシピのチョイスは、勇気を出して揚げ物に挑戦する絶好の機会なのだ…!(大げさ)

揚げる前に炒めたひき肉を豆腐と混ぜ合わせていく。

果たして美味しくなるのだろうか…
ひたすら丸めます

レシピには「ピンポン玉よりやや小さめに丸めると18個になる」との記述。

言われた通りに丸めてお皿に並べてみた。 …おかしい。10個にしかならない。豆腐はレシピ通り1丁使った。となると、やはり謎だったひき肉の分量が圧倒的に足りなかったのか?早くも暗雲が立ち込め始める。

「一口豆腐ハンバーグ」に近い?豆腐の比率が高すぎるが。

ちなみに「玉ネギは加えないのか」と思ったかもしれないが、レシピには「玉ねぎはない方がよろしい」とご丁寧に注意書きがあるので従うしかあるまい。(きっと玉ネギの甘さは不要なのだ)

一応ひき肉は火が通っているし、豆腐もそのまま食べられるので…一口かじってみようか。ビジュアルはお世辞にも食欲をそそらないが。

…うん、豆腐の風味の背後に、ほんのり正体不明のモソモソ感が漂うだけだ。ここから油に潜らせるだけで劇的な奇跡が起きるのだろうか?すこぶる不安である。

いよいよ衣付け。ノンフライヤー一択のわが家にとって、数年ぶりの作業だ。

レシピには「小麦粉をまぶし、余分な粉をよく落とす」とあるが、白い豆腐の上に白い粉を振っても落とせているのかサッパリ分からない。

おまけに肉のつなぎが少ないため、強く触ると今にも空中分解しそうだ。崩れゆく豆腐を前に、赤子を扱うような優しさで小麦粉、溶き卵、パン粉をまとわせていく。

あれ?案外美味しそうかも。

結局「揚げ焼き」スタイルに

レシピには揚げ温度や分数の記載がなく、「鍋の熱い油に入れてサッと揚げます」という指示のみ。

サッと揚げる…?

それなら揚げ焼きでもイケないか…?(どうしても揚げ物の恐怖心が拭えない)

というわけで、油を薄めにひいた揚げ焼きスタイルを採用した。中身はすでに火が通っているのだし、これで十分なはず…だ。

実は揚げ焼きの方が「短時間で急速に高温になる」ため発火率が高いそうだ。それでも揚げ焼きの方が安心感があるのはなぜだろう。
焦げ色がつくのが早い…。
謎のフライボールの完成。

さて、このレシピの付け合わせには何が合うだろうか。正解は「大根おろしに醤油をかけたもの」。なるほど、和風おろしハンバーグ的な感じだろうか。

レシピに従って大根おろしを用意しよう。

ドドン! だいこんおろし~~

「大根くらい自分でおろせ!」というツッコミありがとうございます。

揚げ上がった塊はお皿に並べると結構なボリュームだ。6個も盛ると圧迫感がすごい。

いや盛り付けセンスの壊滅ぶりよ。左手前の大根おろしとちぎり豆腐の見た目が完全一致しとる。もっと高級感の出る黒いお皿に大葉でも敷けば映えたのだろうか…。

隣に「大根おろし+醤油」が鎮座している以上、本当はケチャップ系のソースをドバドバかけたい衝動をグッと抑える。

だが、とにもかくにも完成したのだ!

いざ、実食

まずは何もつけずにそのまま口へ運ぶ。

………。

衣のサクサク感は心地よいものの、中身の豆腐との一体感が皆無。

そして牛ひき肉の「弾力性のある硬さ」と、豆腐のぐちょっとした柔らかさが口の中でけんかしとる…。

豆腐の割合が多すぎたのか、個人的には「玉ネギを入れていない」ことが敗因の気がするのだが。

「やっぱりコロッケの相棒はジャガイモだな」と痛感させられるが、次は本命の「大根おろし+醤油」を乗せて食べてみようか。

おいしそうに見え…ますか…?
大根おろしとの相性は、果たして…?

…あ!意外とさっぱりしてイケる!付け合わせはこれで正解だったのだ。疑ってすまなかった昭和のレシピ!

だが正直に言おう。大根おろしで食べるとしても、1個で「もう十分です」と胸が押し返してくる。(レシピには「一人前6個」とあった…えええ)

そしてやはり大根おろしと醤油のベストパートナーはサンマであり、これではないと悟った。

最後にどうしても諦めきれずにケチャップをかけて試してみた。…圧倒的にこっちの方が美味い!令和のキッズも喜んでパクパク食べそうな味だ。ようやく本物の「美味い」が出た。
 

それにしても、和食なのか洋食なのかイマイチはっきりしない、謎料理である。付け合わせ的には和食寄りなのだろうが、ケチャップを付けたら一気に洋風になり、こっちの方が美味しいというオチ…。

最後に。

レシピには「玉ねぎはない方がよろしい」と書かれていたのだが、前途の通り「玉ねぎが入った方が美味しいのでは?」という疑いがどうしてもぬぐえなかった。

よし、「玉ねぎ入りバージョン」も作ってみよう!

まさに「豆腐コロッケ」の図

うん、これだこれ。一気に「豆腐コロッケ」や「豆腐ハンバーグ系メンチカツ」へと昇華。これならパクパク食べられる!

昭和の教えを破った瞬間、料理は完成したのであった。(ライター:エリ子)

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