HEAT VOICEミュージックヒストリー⑩ヒートボイスとこどもアーティスト
まちづくりは人づくりであり、子供たちは社会の宝である。
釧路を拠点とするボーカルデュオのヒートボイス(目黒広幸、伊藤カズヒロ)は1995年の結成以来、地域に根ざした音楽活動を続ける中で、地元の子どもたちと触れ会う機会が少なくない。時にはステージに一緒に立ち、イベントを盛り上げることもしばしばだ。
キッズロケットと重ねてきた共演
ヒートボイスと最も共演している文化団体といえば、釧路子どもミュージカルキッズロケット(金安潤子代表)である。
1997年に設立した小中学生によるミュージカル劇団で、創作ミュージカルを上演しているほか、市内外で行われる式典や祭事などにも参加している。
ヒートボイスとの初共演は2004年8月、世界こどもサミット釧路大会の歓迎レセプションだった。
その後も釧路市内で行われる音楽祭やクリスマスコンサートなどに、そろって出演した。特に、2008年に発表したアイスホッケー地元実業団の日本製紙クレインズの応援歌「ALIVE(アライブ)」、2009年発表の釧路市動物園の公式テーマソング「動物園に行こう」では、振り付けを準備し、生演奏に合わせて披露した。

釧路市を親とすると“2学年差の年子”ともいえるヒートボイスとキッズロケット。
まちづくりや地域活性化、観光振興につながるさまざまな場面で、それぞれ役割を果たしてきた。
2024年11月30日、コーチャンフォー釧路市民文化ホールで行われた釧路市民憲章制定60周年記念式典では、合同ステージを展開した。2007年にヒートボイスが作曲した「釧路市民憲章の歌 ぼくらのくしろ」を、ひぶな幼稚園の園児らと一緒に歌い、踊った。

伊藤さんは「子どもたちが放つ明るさは、みんなを笑顔にします。キッズロケットの皆さんは常に、周囲を元気にする光がある」とたたえている。
小学生バンド「ザンギッズ」を後押し
ヒートボイスが子どもたちを補佐した取り組みとしては、2010年の釧路こどもバンド「THE’nKids(ザンギッズ)」のライブデビューがある。
ザンギッズは、FMくしろとエルム楽器釧路支店などが手掛けた音楽企画「釧路こどもバンドプロジェクト」で結成した小学生バンドだ。ボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボードの5人は公募、オーディションを経て選ばれた。
バンド名は釧路名物のザンギに由来する。デビュー曲は釧路の特産品であるクジラをテーマにした「KUJIRA DE KUSHIRO(クジラ デ クシロ)」で、作詞は目黒さん、作曲を伊藤さんが担当した。
この曲は、鯨食文化普及啓発を推進する釧路くじら協議会とのタイアップで制作された。軽快で楽しい音楽に乗せて「みんなで食べよう クジラを食べよう」と呼び掛けている。
当時、釧路新聞社の取材に応じた目黒さんは「釧路市水産課の協力で、クジラの竜田揚げとしょうが焼きのレシピを基にした。釧路のクジラを自慢する曲に仕上がった」と語った。
ザンギッズは、小3と小5が1人ずつ、小6が3人でほとんどが楽器未経験者だった。
伊藤さんが初心者でも演奏しやすいようにアレンジしたとはいえ、素人の児童がすぐに人前で演奏できるわけがない。それなりの度胸と力量が不可欠だったが、メンバー一人一人が猛練習を重ねた。
結成から2カ月後の9月4日、釧路大漁どんぱくでの初ステージに臨み「KUJIRA DE KUSHIRO」などを熱唱して大役を務めた。

子どもたちの挑戦は共感を呼び、秋以降、音楽祭や成人式などにも出演した。
メンバーをつなぎ、活動は次の世代へ
2011年春、小学校を卒業したメンバー3人に代わり、2期生が新加入。くしろザンギを観光資源にしようという、地元経済団体の設立を追い風に活動の幅を広げた。
ヒートボイスは「KUJIRA DE KUSHIRO」に続いて、「SONG FOR YOU…we are kid’s band!!」と「百獣の王者」を提供し、活躍を後押しした。
メンバーの交代や、中学生になった元メンバーのサポートを得ながら2013年度まで活動を続けた。

16年後も残る歌、願う活動再開
「KUJIRA DE KUSHIRO」は、新曲発表から16年以上経過した今日も、鯨食文化普及イベントなどでBGMとして活用されている。
一方、ザンギッズは、釧路市役所のホームページでは「活動を休止しています」とある。
伊藤さんは、1期生のドラマーが印象に残っているとし、「結成時は最年少の小3だったが、先輩たちが卒業した3年目からはリーダーを務めていた。年を追うごと、ステージのたびに上達しているのがうれしかったですね」と懐かしんだ。
同時に「この頃は、子どもたちでもインターネットを使えば自分で発信できるが、地元の声援を受けて活動する意義は大きい。音楽はもちろん、釧路そのものに興味があるなら、ぜひ手を挙げてほしいです」と活動再開を切望している。
(編集部:山本雅之)
次回は9月30日掲載の予定になります



