公開:2026/08/30 更新:2026/08/21

HEAT VOICEミュージックヒストリー⑧釧路・ヒートボイス・アカデミア

釧路に根ざしたボーカルデュオとして、音楽活動を展開するヒートボイス(目黒広幸、伊藤カズヒロ)は、教育との接点が多い。
一般的に、著名な音楽家やミュージシャンと学校の関わりは、ライブや校歌制作、自身の半生を語る講演など一度限りとなることも多い。
しかしヒートボイスは違う。さまざまな要望に応え、継続して関わっている。

学校との縁は光陽小から始まった

ヒートボイスが釧路の教育に初めて携わったのは、2003年12月の釧路市立光陽小学校の訪問で、金管同好会と音楽を通じて交流した。
同好会は2004年1月、釧路市開催のスクールフェスティバル北海道大会で、ヒートボイスのオリジナル曲「地平線の向こうに」を演奏した。
ヒートボイスは児童らの熱意に応え、「卒業する6年生の思い出づくりになれば」と同年3月に同校で行われたスプリングコンサートにゲスト出演し、共演した。

光陽小学校金管同好会がスプリングコンサートで「地平線の向こうに」を演奏(2004年3月11日付)

2005年4月に開校した釧路市立東雲小学校では、ヒートボイスが校歌の作曲を手がけた。1995年の結成以来、まちへのエールを歌い続けたことが評価されての依頼だった。
東雲小は白樺台小と桂恋小の統合校。2004年春、開校準備を進めていた統合準備協議会からヒートボイスに声がかかった。
2005年4月6日の開校式では、作詞者の齋藤彩美さんのピアノ伴奏で、ヒートボイスが校歌を披露した。引き続き行われた始業式で、早速、児童が覚えたばかりの校歌を歌った。

子供たちに希望を与える曲を作りたい―。校歌作曲の意気込みを釧路新聞の記者に問われ、そう即答した。
20年以上が経過したが「2024年に訪問した際、東雲小を卒業した児童が、大学に進学して教員となり、東雲小に勤務していると聞きました。感慨深いものがありました」。

17年後も歌い継がれる「芦野の華」

2008年秋には、釧路市立芦野小学校の開校20周年記念ソング「芦野の華」を制作。目黒さんが作詞、伊藤さんが作曲を手掛けた。
目黒さんの娘が同校に通学していた縁で、節目を祝う曲づくりに着手した。歌詞は児童や保護者から募集。3番まである歌詞のうち、1、2番は子どもたちの思い、3番は保護者の願いを盛り込んだ。曲名は、同校の運動会で6年生が披露する組み体操に由来する。

「芦野の華」は2008年11月28日に初演。その後も学校ぐるみの音楽の授業「ミュージックタイム」をはじめ、運動会、全校集会、合唱発表会、6年生を送る会などで歌う愛唱歌として親しまれてきた。
ヒートボイスは2026年7月22日、17年ぶりに同校を訪れ、全校児童と「芦野の華」を大合唱し、会場には笑顔が弾けた。
目黒さんは「イベント会場などで、芦野小の卒業生が『今も覚えています』とワンフレーズを歌ってくれることがしばしばあります。校歌とは違う魅力やメッセージが詰まっており、歌い継がれていることはとてもうれしい」と感謝している。

歌い継がれる愛唱歌「芦野の華」。制作から17年ぶりに芦野小学校を訪れ、全校児童と合唱した(2026年7月22日)

教室を飛び出し、活動は釧路管内へ

ヒートボイスならではの教育活動は、釧路市内のみならず、釧路管内にも広がっていく。
初めの一歩は2008年10月28日、弟子屈町の弟子屈高校で行われた芸術鑑賞会だ。「エール」「絆」「タコ君とイカさんの恋物語」などを熱唱し、楽曲制作について語ったほか、生演奏を緊張せずに楽しむコツなどもひもといた。
ヒートボイスにとって同町で初のコンサートとなったライブ&トークショーは、大いに盛り上がった。

弟子屈高校の芸術鑑賞会。弟子屈町内では初のコンサートでもあった(2008年10月28日)

2009年春、同校新聞局から、ヒートボイスに「弟高新聞」が届いた。
芸術鑑賞会終了後、3年生の局長がヒートボイスに質問をぶつけたインタビュー記事が載っている。抜粋すると、いつも応援してくれるファンではなく高校生が聴衆だったことについては「すごく楽しめた。アウェーな感じはしなかった」と感想を述べ、歌ってみたい主題歌は「昼ドラ!濃い曲」と言い切った。高校生へのメッセージとして「これだけは、他人に負けないというものを作ろう」とエールを送った。

伊藤さんは、弟高新聞と同封されていた局長からの手紙を大事に保管している。
「インタビューは、自分たちの高校時代を思い出す機会にもなった。手紙には『私の最後の記事であり最高傑作です』と書かれていたが、ヒートボイスにとっても忘れられない思い出です」と懐かしんだ。

ヒートボイスのインタビュー記事が載った「弟高新聞」と弟子屈高校新聞局長からの感謝の手紙

大学の吹奏楽部とも共演

異色の組み合わせとしては、道教育大釧路校とのコラボレーションがある。
2008年12月13日、釧路市生涯学習センターで行われた同釧路校交響吹奏楽部の第33回定期演奏会に特別出演した。
ヒートボイスが共演のために書き下ろした「Switch(スイッチ)」などを演奏。アコースティックギターとクラシック音楽の融合は、荘厳なステージに彩りを添えた。

ヒートボイスが釧路の教育とつながりを持ち始めた2003年から2008年にかけては、軽井沢ラヴソング・アウォードに4年連続本選出場を果たした2004年~2007年とちょうど重なる。
地方で地道に音楽活動を続け、全国区のミュージシャンに勝るとも劣らぬ活躍は必然、学校関係者の目に留まった。
地域に根ざした“職業・ヒートボイス”は、そのまま地域の青少年の健全育成に生かされる。ヒートボイスの教育活動は、釧路発祥のアカデミア。いっそう共感を呼ぶことになる。
(編集部、山本雅之)


次回は9月10日掲載の予定になります

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