特集記事 レトロなお惣菜
公開:2026/07/20

ホワイトソースには気を付けろ!レトロなお惣菜第6回「オーロラ風いかに込み」

紙面の切り抜きを眺めては悩む時間がやってきた。
70年前のレシピを忠実に再現できそうなネタが、もはや尽きかけている。

このレシピは、早い段階から再現候補として手元に置いていたのだが、気付けば数週間が過ぎていた。

1956年(昭和31年)4月10日の釧路新聞2面より切り抜き

材料も特別なものはなく、手順もそこまで複雑ではない。

ところが、

イカが、イカがどこにも売ってないんですよ!

海温上昇の影響でイカの街である函館すら初競りが中止になったという。
危機的なイカ不足の中で、スーパーをかけずり回り、やっと見つけたのがこのタイミングである。
もういっそタコでもいいんじゃないかとさえ思ったが、ここはぜひクリーム煮にして洋食皿に盛り付けてうれしくなりたい。

それにしても立派な値段で小さいイカですこと

材料はこちら。
「ホワイトソースの素」という商品を見つけることができなかったため、グラタンの素で代用することにした。
フードロスの観点から、食紅は使わないこととする。

下準備スタート

イカは掃除して皮をざっと剥く。指示通り6センチ角に切れるほど1尾の大きさがないので輪切りとする。6センチ四方って相当大きいぞ…?

虫とか背骨とか取るのに一苦労

続いてジャガイモとニンジンをそれぞれ角切りにして下ゆでしておく。
イカがあまりに小さく量に乏しいので、ジャガイモは1個、ニンジンは1/4個に減らす。それでもなかなかの量になる。大丈夫か、イカ。
玉ネギは炒めていれば小さくなっていくからこれくらいで問題なかろう。

買い物に行った時点で、しいたけの隣に燦然と輝くブラウンマッシュルームに手が伸びそうなっていた。洋風と謳うからにはマッシュルームでしょうに!とぼやいてみるも、おそらく昭和31年にマッシュルームは一般家庭では身近になかったに違いない。

そんなしいたけを「うわーサクサク切れておもしろーい!」と小学生並にはしゃいでいたら、全部切ってしまっていた。明らかに量が多いだろう、と気付いた時には手遅れである。
いよいよ主役(イカ)の存在感が危ぶまれる。

下準備終了。メインのはずのイカがこれしかない

炒めていきましょうか

フライパンにバターを落として材料を次々と投下。全然体積量が減らない。そんなに大量に出来ても困る。
メモを読みながら手を動かしていると、「あれば酒をさかずき一杯」という文言が目に入る。さ、さかずき?!

調子に乗って「あおり炒め」なんかもやっていたが、調理も撮影も1人なので、その勇姿をお披露目できず残念である

さてここで難関がやって来た。
ホワイトソースである。

レシピには簡単に「ホワイトソースの素2個」と書いてくれているが、こちとら「マカロニグラタンの素」なのである。
4人前パスタ付きのグラタンを仕上げる前提の商品のため、分量がさっぱり分からない。これは自分で小麦粉とバターと牛乳でホワイトソースを作った方が早かったか、と後悔がよぎるが、それはそれでダマにするか焦がすかのオチがありありと見えて危険が危ない。

慎重にグラムを計って、最適な分量に近づける

計2合の水分量になればいいとして、そこから導き出されるグラム数は…と粉を計り、水と牛乳の量を量り、小鍋を火にかける。
ケチャップは大さじ2。うお、全然ピンク色にすらならない。あけぼの色とはまた雅な言い方よ、これ以上ケチャップを足すのは味に多大な影響を与えそうなので、桜色よりまだ薄いオーロラソースで我慢しよう。再現企画としては食紅を使うのが正解なのだろうが、その後食紅は使い捨てになってしまう運命にあるのでどうかご理解をいただきたい。

イカは、どこだ…?

オーロラもどきソースと炒めた具材、イカを合わせてさっと煮込む。
案の定イカがどこにいるか分からない。
主役をかき消すほど具材が多かったわけではない。
イカが、小さすぎるのだ。

安心してください、事故は起こります

まあまあいい出来じゃない?

さてパセリも振ったことだし、それなりに料理として見栄えもいいのではなかろうか。
片付けを済ませていざ実食へ。

   しょっぱ!!!

明らかにオーロラソースの濃度がおかしい。水分が足りなかったのか、グラタンの素が多かったのかは分からないが、とにかくしょっぱい。

それよりも、問題は、

   ニンジンとジャガイモが生煮えです

下ゆでの時間が短かったのだろう。後から煮込む際に、煮崩れするのも見栄えが悪かろうと勝手な判断が祟った。
それなりにおいしそうに見えて、かなり悲惨な一皿となった。
当たり前だが到底人様の前に出せるシロモノではない。
自分でも完食したくない。

…ということで。

牛乳をだばだば足し、具材が溶けるほどに煮詰め、ついでに冷蔵庫でふてくされているブロッコリーも追加して、普通のシチューになりましたとさ。

これは普通においしいただのシチュー

料理の真髄とは、素材の命を最大限に生かし、食べる人の五感を満たすことだという。
今回生かせたのは、場外のブロッコリーだけであった。

ひとつ言えるのは、イカに罪はひとつもなかったということだ。(編集部:ごめのすけ)

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