観光 マチナカ観光中心市街地・駅前周辺
公開:2026/09/21

マチナカ観光・30分の幣舞橋無料ガイド、60分の珈琲タイム

5代目幣舞橋は、釧路の顔である。
ごめの目「マチナカ観光」においても目的地、または経由地として、頻繁に取り上げてきた。
2026年9月4日付の釧路新聞で、釧路観光ガイドの会(木村浩章会長、会員数15人)が30分無料で、幣舞橋の歴史や景観を紹介するという記事を読んだ。地元ガイドの案内を聞く好機だ。実際に参加し、古き良き時代に思いをはせた。

9月15日、曇り、気温22度。
そよ風が吹く絶好のお散歩日和の午後に、釧路市在住の筆者の友人、DOKUさんと出掛けた。
DOKUさんは、今年6月から始まったごめの目「マチナカ観光」の記事に毎回、得意の絵画を出品し、彩りを添えている。連載を重ねるうちに幣舞橋についても詳しくなったが「きっと、知らないことがあるはず」と未知との遭遇を期待している。

釧路観光ガイドの会は、釧路観光コンベンション協会が02年度に開講した観光講座の受講生が立ち上げた市民団体。釧路湿原や釧路市中心街の案内をはじめ、幣舞観光ガイドステーションとJR釧路駅の釧路市観光案内所の管理運営など、地域振興の一翼を担っている。
会長を務める木村さんは、釧路新聞の文化欄で連載した「伝えたい『蔵』の記憶」を執筆し、ごめの目でも続編を展開している。ほかの会員も釧路の今昔に精通した顔ぶれで、釧路の魅力を発信している。

30分の無料ガイドで幣舞橋を歩く

事前に申し込んだ予約時間の午後1時、集合場所の釧路川右岸側(北大通側)にある幣舞観光ガイドステーションに着くと、この日のガイドを務める佐藤陽一さんが準備万端で待っていた。
「30分という限られた時間ですが、よろしくお願いします」とあいさつ。
われわれ2人とゴメちゃんも「よろしくお願いします」と頭を下げた。

「啄木については、観光客のほうが詳しいですね」と正直に答える釧路観光ガイドの会の佐藤さん

佐藤さんは釧路出身ではないが、釧路の歴史に興味を持ち、同会独自のおもてなしの活動に賛同し、観光ガイドになったという。気になったことを書き留めた手帳は年季が入っている。
まず、目の前に広がる光景を紹介し「5代目の幣舞橋で、今年で50歳」「橋長124㍍、幅員33.8㍍です」と説明した。そのあたりは承知しているとうなずいていると、佐藤さんがおもむろに「最初の橋の長さ、橋の幅は?」と問い掛けてきた。突然のクイズに動揺したが「民営の愛北橋。長さ216㍍、幅3.6㍍」とつぶやいた。辛くも正解。

穏やかな語り口で佐藤さんの話は続く。
「昔々はここから、向こうのホテルを越えたあたりまでが川でした。石川啄木の時代は官設になりましたが、細くて長い橋のまま。きっと、怖い怖いと不満を述べていたのでは」と指摘した。
DOKUさんも「橋の幅が狭かったのなら、すれ違う際には注意が必要。きっとぶつかって落ちた人もいるのでは」と想像をかき立てていた。

ガイドステーションはかつて交番だった

改めて、幣舞橋に向かって歩き始めるかと思いきや、佐藤さんが「このガイドステーションは、昔は交番でした」と話し出した。
昭和生まれの釧路市民なら記憶に残っているかもしれないが、観光客や転入者には意外な事実だ。「今でも、地元の高齢者は落とし物を届けに来ますよ」とにっこり。もちろん遺失物を受け取るわけにはいかないので、釧路警察署を案内している。

釧路新聞によると、幣舞交番は2005年で役割を終えたが、建物は2006年7月に開設した同ステーションとして、そのまま引き継がれた。
トレードマークの屋根のタンチョウのオブジェは交番時代からのもので、釧路らしいアクセントといえる。
筆者が記者となって間もない頃、釧路署管内の交番・駐在所をすべて回り、記事にした。幣舞交番の取材で「道案内がとても多いんです。観光情報も詳しくないといけない」と裏話をしていたお巡りさんの姿が、走馬灯のようによみがえった。

交番から幣舞観光ガイドステーションとなって20年。「マチナカ観光」の拠点としてベストポジション

残り時間で聞いた「四季の像」の話

ようやく橋への移動を開始したが、すでに15分が経過している。
ゆっくり歩きながら、釧路が木材輸送の集積地だった昔話、「幣舞」はフリガナがなければ大半の観光客が読めないという小話を披露。
残り1分。お開き間近になって佐藤さんが「あっ!」と何かを思い出した。4体の彫刻「四季の像」を指さして「50年前の5代目幣舞橋の誕生に合わせてできました。制作費は5000万円超。現在の貨幣価値に換算すると約1億円もしたんです。でも、みんな喜んだそうですよ」と語り、相好を崩した。

ゴメちゃんとの記念撮影に応じる佐藤さん

観光パンフレットでは必ずしも掲載されていない話題を耳にしたDOKUさん。「短い時間で、面白い話がたくさん聞けた」と感謝した。
ガイドの締めくくりで、佐藤さんは「楽しい時間を過ごせました。ありがとうございました」と話し、見送ってくれた。

老舗の喫茶店で振り返る釧路の記憶

ガイド案内を終え、北大通4丁目にある1935年(昭和10年)開店の珈琲店リリーで休憩。
味わい深いキャラバンコーヒーを飲みながら今回の小旅行を振り返った。
「昨年開店90周年を迎えた釧路最古の喫茶店で、釧路の歴史そのものである幣舞橋にひたるというのは、なかなかいい」とDOKUさん。同感だ。店内はもちろん、飾られた釧路の古い写真、手に取って読める釧路の昔の町並みの写真集も郷愁を誘う。

まちで見つけた古き良き写真。昭和3年の4代目幣舞橋の開通風景と昭和10年の喫茶リリー開店当時の店内

幣舞橋というキーワードにひかれたのか、店主の工藤淑子さんも雑談に参加。
「5代目落成の時、日進、城山、旭、寿の4小学校の高学年が式典に出席しました。四季の像の除幕式は、子どもも親もみんな大喜びでした」と懐かしんだ。
四季の像の話題は、数分前に仕入れたばかり。ある意味、旬の話題と手をたたき「ここにも、名物ガイドがいましたね」とゴメちゃん。
DOKUさんも「いろいろな人から、さまざまな視点で話を聞くのは面白い」とほがらかに笑った。

珈琲店リリーに立ち寄ったゴメちゃん

同じ場所を歩いても“語り部”が違えば、発見がある。日常と密接な観光があってもいい。何度でも幣舞橋を渡り歩こう。光を見に行くのが、観光なのだから。(編集部:山本雅之)


幣舞観光ガイドステーション

▽営業時間 9:00~17:00
▽住所 釧路市北大通1-1(幣舞橋たもとの右岸側・北大通側)
▽電話番号 0154-22-2910

珈琲店リリー

▽営業時間 10:00~21:00
▽住所 釧路市北大通4-6
▽電話番号 0154-24-2762
▽定休日 第1、第3月曜日(臨時休業あり)


フィールドデータ

▽道程
幣舞観光ガイドステーション→幣舞橋→北大通→珈琲店リリー
▽距離 約1㌔
▽所要時間 1時間30分(休憩込み)

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