「防災士×防災士記者」③相座聖美さん【続・釧根防災チャンネル】
知っておきたい 親子連れの避難の現実

今回お話を聞いたのは相座聖美さん。
▽略歴
あいざ きよみ 女性の起業をサポートする、うつくしろの社長。「避難グッズお試し座談会」を開くなど、女性の目線で必要な支援を考察、創造している。
子どもと一緒の避難所生活、その難しさとは
山本 「防災士×防災士記者」の3回目は、親子での避難所利用についてです。特に、小さい子ども(乳幼児、小学校低学年)が一緒の場合、保護者の負担は倍増、3倍増です。災害弱者、特に、シングルマザーの防災対策に精通した相座聖美さんに教えていただきます。
相座 災害時、避難所はできる限り利用せず、在宅でしのぐのが理想です。理由は、知らない人、知らない環境での共同生活は、想像以上の精神的苦痛を伴います。とりわけ、小さい子どもたちは、被災したという状況を認識できず、いつも通り過ごしてしまいがち。結果として、他の被災者に迷惑を掛けたり、ストレスを与えてしまうことなどにつながります。
山本 親子で避難所を利用する際、具体的にはどのようなトラブルが起こるのですか。
相座 2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震では、道内全域が一斉に停電してしまうという、国内初のエリア全域での大規模停電「ブラックアウト」が発生しました。釧路市民も世帯によって差はありますが、電気のない生活を余儀なくされました。
当時、5歳の女の子を連れて避難所へ行った、ミナさん(仮名、35歳)が自身の体験を語ってくれます。みんなで考えましょう。

ミナ 福島県出身の私は2011年3月11日、東日本大震災を経験していたので、同世代と比べて、災害対策はしていると自負していました。北海道胆振東部地震の時は、子どもの手をつなぎ、防災リュックを背負って、近所の避難所に移動しました。初動は完璧だったと思います。
山本 「停電が長引く」という情報は、避難所で知ったのですか。
ミナ はい。しばらく、スマートフォンは使えないと覚悟しました。また、津波や大きな地震の心配がなくなったら、帰宅しよう、それまでの辛抱と腹をくくりました。ただ、私の気持ちは整理できたのですが、子どもはそうはいきませんでした。一言で言うと、1時間も経たず、飽きてしまいました。
山本 飽きる?怖がるとか、不安になるとかではなく、飽きてしまったとは。
ミナ まず、なぜ、避難所にいるのか分かっておらず、すぐに、帰宅できると感じている様子でした。しばらくして、防災リュックを物色し「お菓子がほしい」とおねだり。「塗り絵とか、折り紙がしたい」と普段、自宅でしている遊びをしたがりました。できるだけ会話をしましたが、なかなか落ち着きませんでした。停電は復旧していませんでしたが、許可が出たので帰宅しました。わずか2時間ですが、子どもの防災対策の不備を痛感しました。
子どもの「飽きる」にどう備える?
相座 お嬢さんについては、ミナさん自身が平常心で、すぐ側にいたこと、短時間で帰宅の許可が出たこともあり、コントロールできていました。過去の災害の報告によると、帰宅するまで時間が長期化した場合、退屈を理由に、小さな子どもが「泣き止まない」「走り回る」「大声を出す」「暴れる」などして、周囲に迷惑を掛けたという事例は枚挙にいとまがありません。ただ、こうした行動は、決して異常ではないんです。大人でもたいへんですが、子どもはなおさらです。
ミナ それでも、私が子どものために用意できる防災リュックの中身は、よりよいものにしようと改良しました。例えば、お菓子やおもちゃといった、ほっとするものを足しました。
炊き出しの食事が、子どもに適しているとは限らないので、専用の備蓄品も購入しました。試しに、備蓄品のパンの缶詰をちぎって食べました。日々、子どもが飽きない工夫を考えるようにしています。持参したいもののリクエストを聞いて、出来上がった子供のための防災リュックを「あなた専用のだよ」と手渡すと喜んでくれました。

相座 防災リュックは各家庭で準備できますが、避難所そのものも子どもを飽きさせない仕組みが必要です。避難所設置の要件として、面積は広くなくてもよいので、子どもたちが体を動かす、リフレッシュするためのグラウンドや体育館を加えてほしいです。一度、散歩のついでに、自宅近くの避難所に“遊び場”があるのvかチェックしてみてください。

山本 「自助」によって子どものための防災リュックを用意し、「共助」と「公助」で緊急事態であっても、楽しさと笑いがある環境づくりをする。よりよい避難所運営を社会全体で推進していきたいですね。(編集部:山本雅之)
まとめ
- ▽小さい子どもにとっての避難所生活の大敵は「飽きる」こと。保護者のコントロールだけでは限界がある。
- ▽防災リュックに、子どもがほっとするものを入れる。具体的には、菓子やおもちゃなどで、子どもと一緒に決める。
- ▽避難所にグラウンドや体育館があるのが望ましいが、必ずあるとは限らない。平時のうちに、自宅近くの避難所の設備を確認しておくとよい。
釧路市内には2026年6月末現在、避難所が178箇所ある。釧路地区140箇所、阿寒地区22箇所、音別地区16箇所(釧路市ホームページより)




