暮らし 防災
公開:2026/09/16

「防災士×防災士記者」④鳴海美月さん【続・釧根防災チャンネル】

学校が避難所になったら。まとめるのはぼく、わたしたち

学校が避難所になった場合、「指揮官は子どもたち!」と提唱する鳴海さんと工藤さん(左から)

山本 「防災士×防災士記者」の4回目は、避難所運営を取り上げます。市民が災害発生時の避難所として想像するのは、地元の小中学校です。実際、全国各地で災害が発生した際、小中学校はテレビやインターネットで、よく中継されます。今回は2人の防災士に話を聞きます。釧路における防災授業の第一人者の鳴海美月さんと、連載初回でも登場した元陸上自衛官の工藤直弘さんです。

ユーザー
ゴメも同席していろいろ教えてもらうよ。よろしくお願いします!

山本 鳴海さんは学校を訪れて、子どもたちを対象とした防災授業を開いていますが、概要を教えてください。

鳴海 まず、地震や津波の恐さを正しく知り、どのような危険があり、どのように避難すればいいかなどを考えます。学年や学校の雰囲気によって、座学先行のプログラムにするか、模擬避難などの行動を中心としたプログラムを組むかを決めて進めます。さらに、通学している学校が避難所になった場合を想定した避難所運営を、みんなで話し合います。独自に制作した避難所運営ゲームを活用することで、理解を助けます。

小学校などで、防災授業を行う鳴海さん

「怖い」で終わらせない防災授業

山本 子どもたちに興味、関心を持ってもらうために工夫していることは。

鳴海 大前提として、釧路で生まれ育っている中学生以下は、東日本大震災(2011年3月11日)は昔話です。20代も震度4より強い揺れを知らない、または、覚えていません。

ユーザー
震度4までしか経験していないって、びっくり!

山本 釧路新聞などによると、釧路では、釧路町別保で震度6弱などを観測した十勝沖地震(2003年9月26日)、年末に震度5強の大きな揺れが続いた釧路沖地震(2004年11月29日、同12月6日)がありましたが、その後20年以上、震度5弱を上回る地震は発生していません。根室まで広げると、2025年10月26日に根室市などで震度5弱を観測しました。

鳴海さんが自作した「○×クイズ」は、防災・減災の理解の助けとなる

鳴海 一方で、子どもたちは、テレビやインターネットを通じて、大地震や大津波で被災したまちの状況を見聞きしています。映像を見て「体験していない」がために、心身共に疲れてしまう子どももいます。わたしも怖がりなのでよく分かります。動揺しないよう配慮して授業をします。

工藤 なるほど。何事も初めて取り組む際は緊張するものです。震度4までしか体験していない子どもたちは、それ以上の大きな地震を必要以上に恐れて、パニックになってしまうかもしれません。

避難所を動かすために必要なこと

山本 子どもたちを対象とした防災授業の目指すところは、どのようなものですか。

鳴海 学校が避難所となった場合、通学している子どもたちが避難所を運営することです。特に、災害発生直後の迅速な避難所の開設は、しっかりと防災について学んだ子どもたちがするべきだと考えています。

ユーザー
えっ!子どもが避難所のまとめ役!

鳴海 想像してみてください。大災害が発生した際、避難所となる学校へ最初に駆けつけられるのは、通学している児童、生徒をはじめ、近所に住んでいる人たちです。先生たちは、必ずしも通学区域で暮らしているとは限りません。まして、市の職員や消防士などによる助けはしばらく期待できません。

ユーザー
納得!

鳴海 次に、防災授業を受けた子どもたちは、有事の際、それぞれが指示を待たずに動けます。学校に着くやいなや、備蓄品を集め、体育館を中心に避難所を設営し、配慮が必要な被災者のために教室の割り振りもできます。並行して、避難してきた家族の情報の収集と整理も担えます。高学年が主導し、下級生は補助係や引率係を務めます。

ユーザー
学年で役割分担をするのはいいね。

鳴海 さらに、子どもたちは、避難所運営についての共通認識を持ち、意思統一が図られています。大人がまとめ役を担おうとすると、それぞれの意見、主張がばらばらで、なかなかまとまりません。そうこうしているうちに、被災した家族が玄関にあふれ、右往左往、混乱してしまいます。

大人に求められるのは支える役割

ユーザー
経験が邪魔をするのかあ。じゃあ、大人は何をすればいいの?

鳴海 家族の避難スペースを確保した後は、がれきの撤去、ガラスの破片などの掃除、大きな荷物の運搬、駐車場への車の誘導、高齢者らの話し相手など、子どもが苦手なことや腕力が必要なことをしてほしいです。もし、避難した人の中で、医師や看護師、介護福祉士、配管工などがいれば、それぞれの能力を生かしてください。防災士は、子どもたちの運営を全体像を見ながら支援してください。

ユーザー
最初は驚いたけど、理由を聞いたらよく分かった。ありがとう!
「ゴメちゃんも、災害に強いまちづくりに協力してください」と鳴海さん

山本 みんなで円滑な避難所運営を実現するために、あえて、子どもの指示に大人が従うことをお願いしたいと感じました。結びに、鳴海さん、工藤さんからメッセージを。

鳴海 わたしが防災授業に携わり始めたのは、新型コロナウイルスの感染が拡大していた時期です。当初はサポート役でしたが、2023年10月に防災士の資格を取得して以降、わたし自身が先生役を務める機会が増えています。災害に強いまちづくりにつながればという思いで続けています。これからも、子どもたちの防災意識を高めていき、防災士を目指したい人が増えてほしいです。

「子どものうちに、防災について学んだ経験は、大人になっても生きる」と工藤さん

工藤 鳴海さんの学校が避難所となった場合、子どもが運営するというアイデアに大賛成です。学校の学級委員や美化委員の要領で、防災委員を任命してもいいですね。ぐっと、防災・減災が身近になります。防災授業を受けた子どもたちは家族に伝えることで、家族の防災力が高まります。防災授業を受けた子どもたちは、大人になったら、地域の防災力強化に貢献するでしょう。頼もしいですね。
(編集部:山本雅之)


まとめ

  • ▽大災害が発生し学校が避難所になった場合、どこに何があるのかを熟知している児童、生徒がまとめ役を務めるのが最善である。
  • ▽防災授業を受けて知識と技術を身につけた子どもたちは、共通認識を持って、一丸となって避難所を運営できる。
  • ▽初期の避難所では、大人たちは“指揮官”である子どもたちを補助する。力仕事や掃除、高齢者らの話し相手など。
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