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公開:2026/08/21

マチナカ観光・釧路市街レトロ建築巡り

2000年前後から、全国各地で近代化産業遺産や明治・大正・昭和初期の町並みが見直されるようになり、令和にあっても旅行の目当てとなっている。
もちろん、釧路にもレトロ観光スポットはある。
過去の釧路新聞のほか、古地図やパンフレットも抱えて「点を線に」とまちあるきに出掛けた。

高台を下り、釧路最古の木造建築へ

8月13日午後1時、晴れ。
釧路市在住の筆者の友人で、お絵描きが得意なDOKUさんと米町公園で合流した。「ごめの目・マチナカ散歩」には5度目の登場。

高台から下りて、最初の目的地は目と鼻の先の米町ふるさと館(米町1)。
明治30(1900)年、海産物仲買商の渡辺虎蔵さんが店舗兼住宅として建てた釧路最古の木造建築物で、屋根や塗壁、窓のいずれもが味わい深く、職人の技を今に伝えている。
畳が敷き詰められた居間もあずましい。
釧路の歴史や漂泊の歌人と評される石川啄木に関連した資料も展示されている。
DOKUさんは「レトロ観光の出発点として最適ですね。入館無料というのもうれしい」と笑った。

釧路最古の木造建築物である米町ふるさと館
入館無料。居間でのんびり休める

古地図を片手に南大通を散策

米町ふるさと館で情報を整理した後、南大通を歩く。
幣舞ロータリーまで延びる約1000㍍の直線道路は、片側2車線で視界良好。広い歩道の公共枡にはアジサイが咲き、「啄木の歌碑」もそこかしこにある。
商家が林立していた戦前に作られた地図を片手に周囲を確認するが、往年の勢いを感じることは難しい。それでも、かつてのまちの面影を探しながら歩くと、予習で目を付けていた旧南大通ギャラリー(南大通3)が見えてきた。かつて北陸銀行の支店だった建物を活用した文化施設だ。

旧南大通ギャラリー。建物と彫像の調和もとれていて和む

同ギャラリーは2008年から、地元の愛好家の作品発表の場、南大通の文化の発信地として親しまれてきた。
築70年超という老朽化、オーナーの近藤康範さんの死去などを受け2025年7月、惜しまれながら閉店した。シャッターが降りた建物を見上げた際、近藤さんのことを思い出した。

店内を案内しながら、展示の工夫を披れき。「金融機関らしいお堅いつくりと、インテリア雑貨やアンティーク家具は案外、いい関係なんです。面白いですよね」と語り、目を細めていた。

入り口には現在も釧路市出身の彫刻家・の米坂ヒデノリさん(故人)の3作品「送り火」「防雪林」「母と子」があり、南大通の顔、地域の象徴となっている。米坂さんは釧新郷土芸術賞特別賞受賞を受賞している。

港文館(大町2)で休憩後、橋北地区へ。
「北大通側の古い建物は、釧路市役所本庁舎と釧路駅ぐらいしか思い浮かばない」。謎解き気分のDOKUさんと幣舞橋を渡り、ほどなくして、赤いレンガ造りの旧ヤマイチ本山商店倉庫(錦町3)に到着した。
明治末から大正期にかけて竣工し、塩や雑穀などの保存に利用されていた。
現在はマルア阿部商店が営む「炉ばた煉瓦」として営業している。私事ではあるが、家族や友人が来釧した際にはよくお邪魔している。料理だけではなく、落ち着いた雰囲気も喜ばれる店だ。
DOKUさんは「100年以上前の建物が、現役でお客さんをもてなしていることがすごい」と感心し、建物に拍手を送った。

「炉ばた煉瓦」で釧路の歴史を感じながら舌鼓

ゴールは浪花町の煉瓦倉庫群

さらに、釧路川右岸を歩く。午後4時、ゴール地点の浪花町5の煉瓦倉庫群に着いた。
4つの煉瓦倉庫が並ぶ空間にしばしたたずむと、20世紀初めにタイムスリップしたような感覚になる。
DOKUさんは「煉瓦倉庫の町並みは、北海道らしいと観光客に人気です。ぜひ、案内したい」と笑顔で話した。
煉瓦倉庫群のうち市民と関わりが深いのが、国道38号から一番離れた位置に建つ浪花町十六番倉庫(旧三上運送合資会社)で、物流のみならず、市民活動の拠点としてもにぎわった。

明治43(1910)年頃に竣工した十六番倉庫は、木材や農産物の運送拠点としての役割を終えた後、2000年から10年間、NPO法人浪花町十六番倉庫がイベントホールとして再生し、文化、芸術を発信してきた。
ライブのほか、ダンスパーティーやファッションショー、ラーメンフェスティバルなど多彩な催しが開かれた。筆者も仕事、私用を問わず足を運んだのが懐かしい。

十六番倉庫は、郷土のまちづくりの基地として交流を生み、多くの人材が育つ場にもなった。運営管理を担ったNPO法人で事務局長を務めた永田敦子さんは、釧路新聞の取材にいつもにこやかに対応してくれた。一連の活動に終止符を打つ際には「まちづくりに取り組む若い人材が育ったことが一番の財産です」と話していた。

4つのドーマー(屋根窓)が特徴的な浪花町十六番倉庫

休憩を含めて、約3時間のまちあるき。
釧路川の河口一帯をぐるっと巡り、釧路の古き良き時代を訪ねた。米町ふるさと館の歴史的建造物としての貴重さは言うまでもなく、旧南大通ギャラリー、炉ばた煉瓦、浪花町十六番倉庫は、いずれも釧路市都市景観賞を受賞した名建築である。
DOKUさんは「港・釧路の懐の深さを再認識しました。潮の香り、リバーサイドからの風も気持ちいい」と深呼吸し、相好を崩した。同感である。
この日、訪れたレトロ観光スポットはほんの一部。多くの先人たちが残し、育ててきた大事な市民の財産は健在だ。末永く、守っていきたい。(編集部:山本雅之)


米町ふるさと館

営業日は5~9月までの金、土、日曜日のほか、連休やお盆、クルーズ船寄港時は開館する。
開館時間は10:00~15:00まで。問い合わせは0154-41-2032へ。

炉ばた煉瓦

▽通常営業時間
17時~23時(ラストオーダー食事22時/ドリンク22時30分)
▽住所 釧路市錦町3-5-3
▽電話番号 0154-32-3233


フィールドデータ

▽道程
米町公園→米町ふるさと館(旧田村邸)→旧南大通ギャラリー
→港文館→幣舞橋→炉ばた煉瓦→浪花町十六番倉庫
▽距離 約5㌔
▽所要時間 2~3時間(休憩込み)

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