その他 蔵の記憶
公開:2026/03/13 更新:2026/04/23

伝えたい「蔵」の記憶(370)丸三鶴屋の鶴裳会

2012年から釧路新聞・文化欄で連載された木村浩章さんの「伝えたい「蔵」の記憶」を全回数分デジタル掲載します。屋号などの特殊文字については仮名表記に修正。見出し、本文、写真につきましては掲載当時のままとさせていただきます。

2021.3.22

 鶴裳会(かくしょうかい)は、春、夏、秋の最新の着物を顧客に紹介する丸三鶴屋の販売催事です。鶴は、瑞鳥(ずいちょう)と呼ばれ吉兆の象徴と言われ、鶴裳会は丸三鶴屋が最も力を入れる催事です。

 昭和30年代は、所得倍増論、電化製品の三種の神器の言葉がはやり、国民生活に豊さが見られる高度経済成長期を迎えます。着物は、戦後の洋装化により日常の需要は減少していますが、同34年4月10日の皇太子殿下御成婚を契機として女性の憧れのおしゃれとして着物ブームとなります。

「染織逸品秋の鶴裳会」の広告

 写真は、昭和38年9月7日の釧路新聞に掲載された丸三鶴屋の「染織逸品秋の鶴裳会」の広告です。今回のテーマは、明清朝時代の華麗・絢爛・豪奢の文化を高級な着物に取り入れ、「五九〇年余の眠りからさめて…」、「歴史を着る」とうたった高級感あふれるイメージを斬新なイラストで表現して、女性のあこがれの着物を紹介しています。

 日本の伝統美を伝える着物を紹介する鶴裳会。戦前の贅沢制限、活動衣のもんぺ、戦後の衣料不足を体験した女性は繊細な絹の光沢に感激し、戦後生まれの若い女性には華やかな着物を着る夢を与えていますす。会場では、着物の着方を教える着物教室を開催して憧れの着物を着る顧客にアドバイスしています。

 当時の女性のファッションが、クリスチャン・ディオールなどの外国デザイナーのプレタポルテ(高級既製服)が注目されましたが、丸三鶴屋の鶴裳会は、日本の伝統的な着物を楽しむ高度成長期の女性のオシャレの記憶を伝えています。

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