モダンな風に憧れる・レトロなお惣菜 第2回「さけのコトレット」

70年前の釧路新聞連載「今晩のお惣菜」のレシピを再現するこの企画、今回も昭和の台所にタイムスリップしてみよう。
2回目となるレシピは「さけのコトレット」。

コトレット?
聞き慣れない響きだが、きっと洋風っぽい何かなのだろう。細かいことは気にせず、モダンであればよし、という時代の空気を感じずにはいられない。
ではそのコトレットとは何者か、レシピを読んでみる。
……、…。
どう考えてもこれは「コトレット(=カツレツ)」ではなく「クロケット(=コロッケ)」ではなかろうか。
70年後の現在においても、カツレツが何者であるかを咄嗟に答えられる人はそう多くはないだろうから、名前はさておき、昭和の食卓を彩った洋食風のおかずを再現することにしよう。そうしよう。
※カツレツ…日本の洋食においてスライスした肉にパン粉を付けて揚げた料理。なお魚の場合にはフライとなる。
サケ缶は高級食材
缶詰売り場はにぎやかである。常備や保存用からおつまみまで多種多様な缶詰が並び、セールのポップも華やかだ。
そんな中、主役となるサケ缶を探す。

棚の周囲がお買い得をアピールしている側で、平然と90gで458円です、だからどうした!と圧倒の存在感である。
サケの不漁の影響なのか、それとも元々高級路線なのかは不明だが、いずれにしろ「さけカンの小さいのが一個あると」と指示されている以上、従うしかない。
企画でなければ手に取ることなどないだろう一缶をレジカゴに入れる。イワシで代用はできないのか、サバではいかんのか、そんな貧乏性の声を振り切って、いざ調理へ。
さて作ろう
そろえた材料はこちら。調味料は割愛する。

さらっとあたかも簡単に工程が進んでいるように見えて、下準備はなかなかのものである。さらに分量があいまいなため、適量を見極めるのも一苦労である。
常日頃台所に携わっている奥様方には心から敬服の意を表したい。
まずは玉ネギ(1/2個)をみじん切りにして油で炒めておき、じゃがいも(2個)は塩ゆでして潰しておく。裏ごしまでは手が回らなかったため、70年前にはなかったであろうマッシャーを登場させてなめらかなマッシュポテトを作った。


サケ缶を開けると、肉肉しくも美しい切り身が入っている。力を入れずともほろほろ崩れていき、あっという間にほぐれたサケとなった。

ここに酒少量(小さじ1)、炒めた玉ネギ、つぶしたジャガイモ、唐辛子がなかったので七味ひとつまみ、ウスターソース(小さじ1)、牛乳大さじ4を入れて混ぜ合わせる。塩コショウは適当である。
火はつけっぱなしでいいのか止めるのか、とにかく細かい指示がないので闇雲なのだが、次第においしそうな香りが漂ってきた。
サバやイワシなどの青魚系ではなく、ツナの生臭さでもなく、品のある香ばしい匂い。サケの実力が見えてきたか。

牛乳大さじ4が効いてタネが緩い感じになるが、レシピを信じるしかない。冷ましている間にソースを作る。
レシピが指し示すソースの全貌がどうしても想像つかなかったため、ここは未来の叡智AIに解釈を求めたところ、ブラウンソースではないかとの回答を得た。
みじん切りにした玉ネギとベーコンを炒めるが、根気が足りずやや茶色になった程度で次に移る。
小麦粉大さじ一杯を振りかけたところで全体が粉まみれになる。
ケチャップ、水五勺(90ml)を入れた瞬間に乳化作用ではなく糊化の化学反応となり、ゴムのようなぶよぶよのナニカがフライパンの中に鎮座している。
これは失敗なのか、こういうものなのか、正解は藪の中ということにしておこう。(いや明らかに失敗だろ)

休む間はなく次はコロッケだ。少しは冷えて固まったものの、タネはやっぱり緩い。
頑張って木の葉型を意識してみたが、卵液+パン粉を付けているうちに普通のコロッケ型に戻ってしまった。



揚げ物が苦手なため(そもそも料理全般が苦手)準備から調理から撮影から全てがてんやわんやである。コロッケなんてお惣菜を買うのが一番おいしいじゃん!と企画そのもを全否定する言葉だけはぐっと飲み込む。
ソースがコレジャナイ感満載なため見栄えはかなり劣るが、なんとか食卓に出すことはできた。

肝心のお味はというと、とても落ち着く味である。危惧していたソースは若干ぶよぶよしていながらも甘めでコロッケに合う。
付け合わせのほうれん草のソテーと一緒に食べると、バターの香りと油分が重なってさらにおいしい。

現代でもサケやサケの缶詰を使ったコロッケのレシピは数多く検索結果で出てくるので、庶民に愛され続けている定番のおかずなのだろう。
日本の「三大洋食」はとんかつ・カレーライス・コロッケであるという。70年前の食卓に並んだコロッケは今も褪せることなくわれわれの国民食の一角を担っている。
レシピの再現よりもまずは己の料理の腕と台所における立ち回りの基本を習得すべきではないのか、という課題は見ないことにして、次回もまたご期待ください。(編集部:ごめのすけ)




