再現なるか?突っ込みドコロ満載・レトロなお惣菜 第1回「ハムとコン・ケーキ」

ごめの目編集部は、母体が釧路新聞社である(そうなんです実は)。
別件で過去の古い新聞記事を探していたら、「今晩のお惣菜」と称したレシピコーナーがひっそりと連載されているのを見つけた。1956年、なんと70年前である。
1956(昭和31)年といえば高度経済成長期の幕開けで一般家庭に冷蔵庫はまだ十分に普及されていなかった時代である。当然インターネットという概念すらなく、レシピサイトなぞあるわけもない。
レシピの考案は当時の社員か、専門家あるいは一般の方によるものかは不明だが、当時の味は果たして令和のグルメ時代に通用するのか、70年前の献立が現代の台所で再現できるのか、ゆるく検証してみたい。
戦後のモダン化の波
記念すべき初回は「ハムとコン・ケーキ」。
コンはコーンだと推測する。現代のカフェメニューでも通用しそうなハイカラな響きの一品、まずは当時の紙面の切り抜きをご覧いただこう。

新婚の若奥様ならラララ気分…情緒が駆け抜ける導入文の軽やかさよ。
いや待て、ここら辺に引っかかっていると永遠に完成しないので手順に進もう。
単位の壁に阻まれながら調理開始
ラララ気分が打ち砕かれたのは単位の壁である。
・小麦粉十匁
・砂糖十匁
・角ハム十匁
匁(もんめ)って!
尺貫法であることにひしと時代の流れを感じる。現代人は迷わずグーグル先生に教えを請い、十匁は37.5㌘であると解答を得た。
材料はこちら。

・ボウルにスイート・コーン大さじ二杯、小麦粉37.5㌘、砂糖37.5㌘、ベーキングパウダー少々、リンゴ半個を入れて混ぜ合わせる
小麦粉と砂糖の配合が1:1である。何度か見直したが1:1である。理性が減らせと叫ぶが、検証なので逆らえない。甘やかな若主人の体組織の半分は砂糖が占めているのであろうか。

続いてええと、ベーキングパウダーを少々…?
塩こしょうならいざ知らず、化学反応で膨らませる粉においてこの指定はやや雑ではなかろうか。
事故を避けるため、ここはAIに相談し、1.5グラム程度が良いという神託を授かる。
・牛乳を溶いてぼってりさせ、ホットケーキのように2枚焼く
ここでも牛乳の分量指定がなかったため、大さじ3杯ほどの牛乳をドバッと入れたところ、生地は「ぼってり」を通り越して「とろっとろ」に。
さらには材料を全て投入してしまったため、コーンとリンゴでボウルの中がカオスになる。

賢い奥様たちは先に様子を見ながらぼってり生地を先にこしらえ、具材を混ぜた方がよろしいかと存じまする。


・角ハム十匁(37.5グラム)2枚をケーキを焼いたなべで手早く裏表を焼く
仕上げに角ハム十匁を2枚焼いてケーキの上に乗せる。
本来なら、立派なブロックハムを厚切りにするのが正解なのだが、スーパーで手に取ったハムの塊の値段におののき、お財布事情を優先させて「ハムもどき(ボロニアソーセージ風)」で代用することとした。恨むべし物価高。
思っていたよりは悪くない
面積のあるハムは多少のアラを覆い被せてくれるのでありがたい。
たったこれだけの工程だが、なぜか大仕事をしたような気になっている。段取りが悪い証拠である。
ああ、バターの角切りを乗せるんだっけ。
いざ完成。
「コレジャナイ」感は満載であるが、漂ってくる香りは悪くない。

冷めないうちに実食しよう。


予想通りに生地がベタ甘なのだが、リンゴの酸味が絶妙にそれを中和して、さほど甘さが気にならない。
そこにハムとバターの塩気が乗っかってくるので、バランスとしてはちょうどいい。大手ハンバーガーチェーンの朝食メニューにも甘い+しょっぱいのパンケーキサンドがあるように、組み合わせとしては正解のようだ。
ただ、やはり「ハムもどき」では物足りないことを実感。ここは奮発すべきだったのだろうか。
オリジナルはいずこ?
記事の中にアメリカ料理の秀作とあるが、調べてみたところ該当する料理は存在していないようだ。
コーンブレッドというアメリカの伝統的なパンはあるものの、スイートコーンを混ぜ込んだ生地とは別物である。今回のレシピでは残念ながら「そういやコーンもいたなあ」という程度だった。
おそらくではあるが、本場のアメリカ料理ではなく、当時の日本人が抱いた「アメリカっぽい何か」なのだろう。
記載の通り2枚焼いたが、これは2枚で一人前なのだろうか。
若主人であればぺろりと平らげる体力を持っているだろう(中年には1枚で胸いっぱいになった)ことを期待して一人前としよう。
おおよそではあるが、材料費は一人前310円である。
これからも歴史に埋もれた昭和の台所に遠慮なく突っ込んでいこうと思うので、応援なにとぞよろしくお願いします。(編集部:ごめのすけ)




