「防災士×防災士記者」⑤佐藤康弘さん、藤原将男さん【続・釧根防災チャンネル】
弟子屈町防災士会が設立1年。これまでとこれから

今回お話を聞いたのは佐藤康弘さんと藤原将男さん。
▽略歴
さとう やすひろ 弟子屈町防災士会会長。弟子屈町社会福祉協議会事務局長。2019年に防災士の資格取得。全道、全国各地の被災地で災害ボランティア運営センターを支援している。
ふじわら まさお 弟子屈町防災士会副会長。MASHU LINK代表。2008年に防災士の資格取得。防災・減災を、地域活性化やまちづくりと結びつけて提案、発信している。
防災士がつながり、まちを守る力に
山本 「防災士×防災士記者」の5回目は、弟子屈町防災士会です。2025年9月1日、町内在住の防災士有志が立ち上げました。発足から1年が経過しましたが、会長の佐藤康弘さんと、副会長の藤原将男さんにこれまでとこれからについてを聞きます。
山本 弟子屈町防災士会はどのような団体ですか。
藤原 2025年9月1日の「防災の日」に発足しました。会員数は9月30日現在、19人で、このうち女性は3人です。年齢層は30代から60代で、最年長はわたしで67歳。職種は、公務員から団体職員、会社員などさまざまです。3カ月に一度例会を開き、研さんを積んでいるほか、町や消防、学校などの防災・減災の取り組みにも参加、協力しています。
山本 そもそも弟子屈町で防災士会を作ろうと思ったのは、なぜですか。
佐藤 「同じまちに暮らす防災士が一緒に活動できれば、より大きな力になるはず」と想像したのがきっかけです。設立前、町内には20人超の防災士の資格取得者がいましたが、顔の見えない状態でした。わたしの実体験として、町民に防災意識を持ってもらうために、個々の活動ではどうしても限界がありました。町内で最古参の防災士の藤原さんと相談し、1年以上かけて態勢を固めました。
藤原 わたしはもうすぐ、防災士の資格を取得して20年になりますが、昔は防災士の知名度が全くなく、誰からも相手にされませんでした。そもそも、弟子屈町は、津波の心配がなく、震度4を超える地震もほとんどない地域のため、防災・減災への関心が低い土壌でした。
近年、集中豪雨や河川のはん濫が全国各地で発生しており、防災・減災が少しずつ関心事となっています。この機を逃さず、まちぐるみで「災害は、どこでも起こりうる。だから、備えなければならない」という意識を持つための普及啓発を、弟子屈町防災士会が担っていきます。

組織の力で広がる活動
山本 少し気が早いかもしれませんが、成果は上がりましたか。
佐藤 弟子屈町防災士会というまとまりができ、会員が積極的に行動することで、地域社会から少しずつ信頼される団体となっていきました。併せて、地元の活火山であるアトサヌプリ(硫黄山)の火山防災についての関心も高まっており、情報発信をしやすくなっています。

特に、組織化してよかったことといえば、行政機関への積極的な働き掛けです。年齢、性別、職業、経験がさまざまな会員が、それぞれの立場で意見を出し合い、建設的に議論することで、まちのために必要なアイデアをまとめられています。
被災地の教訓を事前防災に
山本 具体例を教えてください。
佐藤 災害によって使えなくなったり、汚れてしまった家具や家電などの災害ごみ(災害廃棄物)の撤去についてです。災害ごみの処分は、通常の処理施設だけでは、とうてい賄えません。運ぶ人も、運ぶ場所も必要です。災害が起きてから空き地を探すのではなく、事前に空き地を選定しておくことを提案しています。
佐藤 北海道災害ボランティアセンター初期支援チーム登録者として2024年の山形県7月豪雨災害では、酒田市で支援に当たりました。大雨により道路の流失や崩壊、地滑り、河川のはん濫などに見舞われ、多くの住民が被災し、家財も水浸しになりました。天候は回復しましたが、災害ごみの撤去場所があらかじめ決まっていなかったため、復旧作業は停滞。中には、災害ごみが室内にいつまでも放置されている家屋もありました。この経験を、弟子屈町防災士会に報告、検討したところ、会員の賛同を得て、具体的な対策を講じるよう動き出しました。

次世代へつなぐ、災害に強いまち
山本 今後の展望は。
藤原 設立当初から、事前防災の実践を訴え「災害がいつ起きてもいいように、町民の意識を変える」ことを第一に据えています。より浸透させるために、防災士の仲間を増やしながら、行政の防災担当者、消防の職団員らと連携することで、もっと、災害に強く、復旧復興も迅速な弟子屈町にしていきたいです。

山本 最後に、佐藤さん、藤原さんから、一言ずつお願いできますか。
佐藤 2016年4月の本震から余震が断続的に発生した熊本地震以降、災害そのものによる直接死はもとより、負傷の悪化や避難生活中の心身の負担などが原因の災害関連死が問題視されています。せっかく、一命を取り留めても、その後の再建に行き詰まり、被災者としての絶望的な生活の長期化によって、心身ともに疲弊するからです。それならば、苦しい時間を短くできれば亡くなる人を減らし、まちの復旧、復興も早くできるのではないでしょうか。大きな災害によって被災した場合、どのような厳しい状況下に陥るのかは、誰もが考えられます。まちぐるみで、有事への備えを準備し、迅速に普段の生活を取り戻す道筋を用意していきたいです。
藤原 2011年3月11日の東日本大震災を経験していない世代が、学校で防災訓練や講座に参加し、中には、継続して学びたいという子どももいます。これから、大人になる彼、彼女らが防災士の資格を取得してくれれば、いっそう、まちの防止力は向上し、弟子屈町防災士会の活動の幅も広がります。一緒に、やってみませんか。
(編集部:山本雅之)

まとめ
- ▽目指すところは、町民一人ひとりが「生きているうちに、必ず、災害に遭う」という意識を持つこと。
- ▽個々の防災士が、防災士会としてまとまることで、できることが高度化、多様化する。
- ▽災害が起きたらどうなるのか、何が必要かを考え、備える「事前防災」は誰でも実践できる。まずは、身の回りから。
- ▽若い世代が防災に関心を持つことは、まちの防災力向上につながる。




