暮らし 活動紹介お店・買い物中心市街地・駅前周辺
公開:2026/08/05

〝いらない〟が〝ありがとう〟に変わる場所「0円ショップ 松本商店」

JR釧路駅から徒歩数分。
和商市場の向かいにある「大和ガレージ(仮)」の前を通ると、人だかりができていました。

「何だろう?」

気になって近づいてみると、食器や本、雑貨、洋服など、さまざまな品物が並んでいます。そして、手作りの看板には大きく「0円ショップ」の文字。

その名の通り、並んでいる品物はすべて無料。気に入ったものがあれば持ち帰ることができます。

「どうして無料なの?」
「どんな人が始めたんだろう?」

そんな疑問が次々と湧いてきます。

実際に訪れてみると、品物を見ている人たちの間では自然と会話が生まれ、「これ使ってたよ」「これ欲しかったんだよね」と笑顔があふれています。

ここは、単なるリサイクルショップではありません。

「人と人がつながる場所」でもあるのです。 今回は、「0円ショップ 松本商店」を運営する松本さんに、お話を伺いました。

ブルーシート1枚から始まった0円ショップ

0円ショップの始まりは、2025年10月。

大和ガレージ(仮)で開催されたイベントで、家庭菜園で育てた豆や芋を販売する傍ら、自宅で不要になったものをブルーシート1枚に並べたことがきっかけでした。

すると予想以上の反応がありました。

「ちょうど壊れていたから助かる!」

「これって何に使うもの?」

「どうして無料なの?」

品物をきっかけに、初対面同士の人が自然と話し始め、気づけば人だかりができていたそうです。

「これは面白い。不要品を通して、人が集まり、交流が生まれる場所になるかもしれない」

そんな手応えを感じたことが、現在の0円ショップにつながっています。

持病をきっかけに変わった人生

松本さんは4年ほど前、持病の悪化により早期退職しました。

仕事では環境問題にも関わっていたことから、以前から「物を大切に使うこと」には関心がありました。

しかし退職後は収入がなくなり、まず向き合わなければならなかったのは家計でした。

「これは本当に必要だろうか」

そう自分に問いかけながら生活を見直していくうちに、自給自足や、お金をかけない暮らしに興味を持つようになったそうです。

そんなある日、YouTubeで偶然目にしたのが「0円ショップ」の動画でした。

不要品を譲る人ともらう人。

そこには売買ではなく、笑顔や会話がありました。

「ゴミを減らせるだけじゃない。お金をあまり使わなくても、人と人がつながる」

その仕組みに強く惹かれ、「自分にもできるかもしれない」と思うようになったと言います。

0円ショップがくれた、新しい出会い

活動を始めてから、松本さんの生活は大きく変わりました。

まず大きな転機となったのが、東京からの移住者で大和ガレージ(仮)の主宰者・天野さんとの出会いです。

運営メンバーとして声を掛けられたことで、活動の幅が大きく広がりました。

最初は月に1度だった開催も、体調の回復とともに回数が増え、現在は毎週木曜日を中心に開催。さらに第2金曜日の夕方開催も始まりました。

通ってくれる常連さんも増え、今では名前を呼び合う関係に。

「今日はこんなの入ったよ。」

「元気だった?」

そんな何気ない会話が、自然と交わされるようになりました。

少しずつ社会復帰できていることを実感しています。

さらに、大和ガレージという自由な空間には、音楽家やアーティスト、表現活動をしている人たちも集まります。

イベントへの出店依頼を受けたり、市内で同じような譲り合い活動をしている人とつながったりと、新しい出会いは今も広がり続けています。

ラジオと「0円通信」

活動は、お店だけではありません。

今年4月からはFMくしろで、毎月第1火曜日放送の「0円Lifeの環」に出演。

お店で起きた出来事や、お金だけに頼りすぎない暮らしについて、肩ひじ張らずに語っています。

もう一つ人気なのが、毎月発行している手書きの「0円通信」。

全国各地の0円活動やおすすめの本の紹介、店で起きた出来事、そして皆さんから寄せられたカンパの収支まで丁寧にまとめられています。

「収支まで公開するんですか?」と思わず驚きますが、それも松本さんらしさ。

この通信は、0円ショップお隣の街逢室やクラフトカツでも配布されていて、もちろん価格は0円です。

目指すのは、0円ショップが当たり前にあるまち

ありがたいことに不要品の持ち込みは増え続けています。

現在は、

・持ち込みは1人1点まで

・持ち帰りは1人5点まで

というルールで運営しています。

今後は譲り合いだけではなく、返却してもしなくてもいいレンタルサービス、

被災地への物資提供、野菜の種の交換会など、さらに新しい「0円アクション」にも挑戦したいと考えています。

そして、松本さんが思い描く夢は、0円ショップが市内各地に広がること。

近所で必要な物が見つかり、自然と会話が生まれる。

昔の「お醤油貸して」と声を掛け合っていた頃のような、人とのつながりが戻ってきたら素敵ですよね、と笑います。

さらにその先には、企業同士で不要になった机や椅子、厨房機器などを譲り合う「企業版0円ショップ」という構想も。

「妄想は尽きません」と松本さん。その妄想は、少しずつ現実へ近づいているようにも感じました。

持病のこと、畑仕事、てんかん当事者団体の活動など、忙しい毎日の中でも、「できる範囲で少しずつ」。 そんな松本さんの活動が、これからどんな広がりを見せていくのか楽しみです。


0円ショップ 松本商店

場所
釧路市黒金町14番地 大和ビル1階ガレージ

開催日時
毎週木曜日「平日ランチ会&0円ショップ」を中心に開催
12:00~15:00(変更となる場合があります)

利用ルール
・持ち帰りは1人5点まで
・持ち込みは1人1点まで
・汚れや破損、臭いがなく、使用できるもの

開催情報は「大和ガレージ(仮)」のInstagramをご確認ください。


編集部より

駅前西部地区には、決して派手ではないけれど、小さなお店が並び、少しずつ人の流れができ、交流が生まれています。密かに釧路のニュースポットになってきているのを感じます。

0円ショップには、いろいろなものが置いてあって、見ているだけでも楽しい!

掘り出し物を探す楽しさはもちろんですが、一番の魅力は、そこに集まる人たちとの何気ない会話かもしれません。

店主・松本さんの手作り「0円通信」も読み応えがあり、0円なのに、皆さんから寄せられたカンパの収支報告が記載されているのもおもしろいです。

6月号の「6月もお宝・珍品続々」では、火鉢(直径60センチ)、アベノマスク(笑)、鶏サブレの空き缶など……ツボる珍品ばかり!

きっと、品物だけではなく、あたたかな出会いも見つかるはずです。

ぜひ、皆さんも0円ショップならではの楽しさを体験してみてください。(編集部:いとみや)

TOP