特集記事 レトロなお惣菜
公開:2026/07/03 更新:2026/07/01

手を加えたい衝動は杞憂だった・レトロなお惣菜第5回「豚肉とりんごの重煮」

70年前のレシピ再現のお時間です。

なるべくツッコミどころが満載のレシピを選ぶようにはしているが、材料が手に入らなかったり(生のタケノコとか)、知見と技術が未熟なため挑戦に二の足を踏んでいたりで、平凡なレシピを選んでしまうこともある。

今回は材料も手間も初心者レベルと思われる無難なレシピを選んでみた。
では当時の資料から。

1956年(昭和31年)4月13日の釧路新聞2面より切り抜き

豚肉とりんごの取り合わせは当時は珍しいものだったらしい。
確かに、肉料理にフルーツを合わせる文化は日本ではあまり普及していない。酢豚にパイナップル論争が巻き起こった歴史がそれを証明している。70年前ならなおさら異なものゲテモノ扱いされる悲しい運命だったに違いない。

そして毎度思うのだが5人前が曲者である。核家族という言葉が流行語になるのは約10年後だそうな。
2人前に分量を再計算し直して、台所に向かう。いざ!

不親切なレシピに不満

台所に向かう前に時は買い物にさかのぼる。

豚肉70匁(約281グラム)を2人分=110グラム強に計算し直したのはいいが、部位は、一体、どこだ…?
「豚肉は薄く、すき焼きより大きめに切り」とあるのを見ると、生肉をカタマリでスライスせよということなのか。

スーパーの肉コーナーの前に立てば、豚肉だけで5種類以上は並んでいる。バラ、ロース、肩ロース、こま切れ、もも、ヒレ…。せめて赤身がいいのか脂身がいいのかくらいは書いておいてほしい。
迷った結果、必要な110グラムに一番近い小容量パックのものを買う。
りんごは1個279円。高くなったねえ君も。

家にあるもので!の代表選手みたいな顔ぶれ

豚肉は塩コショウを振っておく。
りんごの切り方は分からないので適当に。1玉は多い気がしたので2/3個に抑えた。
玉ねぎは1/2個。みじん切りがないという快適さについ鼻歌が出る。

肉に下味。ずぼらなのでトレーの上で済ませます
玉ネギをみじん切りしないのでこれはアタリの回です

ここはぐっとこらえて

さて鍋に油を塗り、とあるが、どんな鍋を使うのかサッパリ分からん。
炒めるわけではないが油を塗るのはくっつき防止なのだろうか。料理下手にはその辺が不明である。
玉ねぎ、豚肉、りんごと重ねて塩コショウをして…
それをもう一度繰り返して…
水と油を入れて火にかけると。

味付けは塩コショウだけだ…と…?

白ワインとかコンソメとかバルサなんちゃら酢とか入れないの?!

濃い味に慣れ切った現代人に、このシンプルさは受け入れられるのだろうか。シンプル以前に味がないんじゃないだろうか。
「素材の旨みを」とかよく聞くが、スーパーで揃えた材料にそこまでのポテンシャルがあるのだろうか。
ああ、目の端に映る顆粒コンソメを入れてやりたい。しょうゆをひとたらし入れてやりたい。
…が、ここは我慢。おいしいものを作るコーナーではない、再現することが主旨なのである。

疑心暗鬼に駆られながら2段分重ねた

蓋問題勃発

前回の記事でエリ子女史も言及していたが、蓋をするのかしないのか問題に直面した。
重ね煮とあらば「蒸され」ないと火が通らないだろうから蓋は要るの…か…?
こういう基本的なことが省略されていると、経験値不足者は迷子になる。

火が通らないのが怖い小心者なのでフタをしてみる

煮たったので蓋をしたまま16~7分煮込む。キリよく15分ではないところに、こだわりを感じる。
タイマーをセットして16分待つ。
洗い物も少ないし、やることがないので時間でも潰そう。

スキマ時間にごめちゃんでも編みましょうかね

タイマーの残りが5分ほどになったところで、鍋の中が気になりこっそり見てみることに。

なんじゃこりゃー!冠水してまうでー!

待て待て待てーい!

素材から出た水分で、スープになりかけているではないか。
悠長に編み物などしている場合ではなかった。
慌てて蓋を外してみるが、残り時間はもう5分を切っている。

水分がなくなるまで煮詰めればいいじゃん!とひらめいたが、それでは多分料理のベクトルが変わってくるので却下。
あわあわしているうちにタイマーがピーピーと鳴り出す。ひとまず火を止めよう。

念のため補欠を用意

煮汁もといスープが残ってしまったのもあり、レシピ外だがソースを作ることにした。塩コショウのみの味付けに対する信頼度はゼロに近い。

こういうときに頼もしいのはAIという現代文明である。
「豚肉のりんご煮を作っているが、味付けが塩コショウのみでヒジョーに不安である。この料理に合う一般家庭にある調味料で作れるソースは?」と聞くと、洋風ケチャップソースを提案してくれた。

こういう時にAIは便利だ

ケチャップ大さじ2、ウスターソース大さじ1、はちみつ(なかったので砂糖)小さじ1、残った煮汁を煮詰めて完成。

実食してみたら意外な感想

料理の全貌がイメージできないこともあり、盛り付けも雑にそのまま置くとする。映えという単語などワタシの辞書にはない。

レシピ通りの塩味のみをまずは試食。

あれ、意外とおいしいのでは…?

肉に下味の塩コショウ、重ねる際にも塩コショウ、とシオコショー攻撃が効いてか思っていたより全然イケる。
調理前は「絶対味がしないだろう」と決めてかかっていたのだが、そもそも味がしない料理を新聞に載せるはずないか。

こちらがレシピ通りに作った完成品。水没しかけたことを除けば再現度は高いのではと思う

玉ねぎはクタクタに柔らかくなり、りんごが酸っぱくも甘くもなく控えめに尖った塩味の中和剤になっている。
火を通しすぎたのか、豚肉はやや固くて残念。
マイナス点はあれど、素材そのものの優しい甘さの中で豚肉がピリッと主役を張る立派なおかずであった。意外とコショウが名脇役!

とはいえ、煮込む時に顆粒コンソメ的なものを少々入れた方がさらにおいしくなるだろうことは申し上げておく。

不安すぎてソースを作ったが杞憂だった。塩味だけで十分。まあ、せっかく作ったのでかけて食べましょう

塩味のみのレシピに懐疑の目を向けていたことを深く反省。
むしろ玉ねぎってこんなにおいしかったっけと野菜の底力を見た気がした。

食卓に出ても「わーなにこれおいしそう!」というメインにはちょっと遠いものの、副菜としてちゃっかり鎮座している分にはおかしくない。

豚肉とりんごの重ね煮で検索するとコジャレタ料理がたくさんヒットする中、こちらのシンプルなレシピもぜひご参考あれ。

2人分で分量を調節したが、実際は3人分あったので、1人前約225円である。りんごが高いんだよなあ。(編集部:ごめのすけ)

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