公開:2026/09/10 更新:2026/09/28

HEAT VOICEミュージックヒストリー⑨ヒートボイス、動物たちと共演

釧路の観光資源と言えば―と釧路市民が問われると、釧路湿原、阿寒湖、山海の味覚、ご当地グルメ、アイヌ文化、幣舞橋と釧路フィッシャーマンズワーフMOOを含めたウォーターフロント、涼しい夏と冬晴れ、など絞りきれない。一方で、市民のお出かけスポットといえば、必ず、釧路市動物園が表彰台に上る。

動物園は1975年に国内最東端の動物園として開園した。
道内最大の面積(開園当時は国内最大)を誇る豊かな自然環境で、さまざまな動物を飼育している。
1995年に世界で初めてシマフクロウを飼育下での繁殖に成功したことでも有名で、保護・研究機関として多くの実績を残している。
敷地内に遊園地を併設していることから、週末は大勢の家族連れ、カップルなどでにぎわう。

動物園から届いたテーマソングの依頼

2008年12月、釧路を拠点に音楽活動を続けるボーカルデュオ(目黒広幸、伊藤カズヒロ)に、同園に関連した楽曲の制作依頼が届いた。

依頼主は、動物園の人気者のホッキョクグマのツヨシを通じて、地球温暖化問題を訴える市民団体「ツヨシプロジェクト」代表の田村悦子さん。
動物園では、四肢に障害がある状態で生まれたアムールトラのタイガとココアの成長、雄と思われていたツヨシが実は雌という検査結果などが、全国区の話題となっていた。
田村さんは「注目されている今、応援歌で盛り上げたい。釧路から発信することに熱くこだわるヒートボイスに」お願いした。

2009年釧路新聞・元旦号の第5ブロック「命を紡ぐ」で表紙を飾ったタイガ(右)とココア

お披露目に向け制作開始

快諾したヒートボイスは、楽曲のお披露目が4カ月後、新年度早々のタイガとココアの新居完成時と決まっていたことから、すかさず行動を起こした。
動物園を訪問して、動物たちを観察するとともに、飼育員とも交流、仕事のやりがいや苦労話を聞いた。
歌詞は当初、ツヨシを主役に据えていたが、タイガとココアを含む動物園全体に更新。さらに、飼育員の協力を得て録音したライオンやシマウマなどの鳴き声も盛り込んだ。

公式テーマソングの曲名は「動物園に行こう」。

歌い出しは「サル・トラ・キリンにタンチョウ・ライオン、みんなみんな動物園に遊びに行こう」。
1番でタイガとココアが登場。2番ではツヨシとクルミ(ホッキョクグマ)が主役になる。フクロウ、ウサギ、バイソンと飼育動物をどんどん連ねて「サル・トラ・キリンにタンチョウ・ライオン、みんなみんな動物園に遊びに行こう」で締めくくる。
完成直後、釧路新聞の取材に応じた作詞担当の目黒さんは「子供から大人まで幅広い世代に覚えてもらえて、踊り出したくなるような曲」と笑顔。作曲担当の伊藤さんも「ジャングルのイメージ」と間髪入れずに答え、手応えを示した。

タイガとココアの前で迎えた初演

「動物園に行こう」の初演は2009年4月5日、タイガとココアの動物舎の常設公開初日に行われた。ヒートボイスは、2頭の目の前で、客の手拍子を受けながらテンポよく歌唱する中、至近の獣舎にいるライオンが雄叫びを上げた。
田村さんは、思いがけない咆哮(ほうこう)を、釧路新聞で執筆していたコラム「楽しみみぃつけた―動物園に行こう」(2009年4月12日付)で報告。「あまりにもカッコ良く、タイミングがグッドで…。ただ、初めて聞く大音響にタイガとココアが心配だったと、山口良雄園長(当時)が話していました」とつづった。新曲は、ほかの動物にも歓迎されたようだ。

ヒートボイスの熱唱を報告する釧路新聞の連載「楽しみみぃつけた 動物園に行こう」(2009年4月12日付)

動物たちは代わっても、歌は続く

2009年8月25日にタイガ、2018年1月28日にクルミ、2022年7月17日にツヨシがそれぞれ死亡。
ココアも2025年6月18日に天に召され、「動物園に行こう」の歌詞に登場した名前は1頭もいなくなったが、アルパカやシロテナガザル、クロヒョウなど、新しい仲間が加わった。
2024年11月から不在だったホッキョクグマ舎には2025年12月、マルルが入り、元気な姿を見せている。

ヒートボイスは2025年10月11日、開園50周年記念フェスティバルのステージに立ち、「動物園に行こう」はもちろん、2013年に依頼を受けて制作した「天使のキリン ぼくらのキリン」などを歌唱、半世紀の節目を祝った。

釧路市動物園の開園50周年記念セレモニーのステージに立ったヒートボイス(2025年10月11日)

伊藤さんは「『動物園に行こう』には釧路の地名が入っていませんが、まさに、釧路を象徴する曲だと思っています。ツヨシプロジェクトの熱意、唯一無二のヒーローであるココアの強さなど、感謝の思いを胸に歌い続けていきます」と話している。
(編集部、山本雅之)


次回は9月20日掲載の予定になります

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