観光 マチナカ観光鶴ケ岱・橋南地区・米町周辺
公開:2026/09/02

元町探訪記~米町界隈をひた歩く

釧路の市街地として発祥の地は米町である。古くは米町や南大通が中心部として栄えていた。現在の北大通周辺に市街地の中心が移る以前は、多くの人が行き交う生活の要の場だった。

今は繁栄の影が薄くなって久しいが、静かに佇む街並みはどこか懐かしさを感じさせる顔を持っている。坂道や寺社、古い道筋をたどっていけば、普段目にしている釧路とはまた違った景色が見えることだろう。

今回は釧路の「元町」とも呼ばれるこの米町界隈をぶらぶらと歩いてみることにした。
地元民だからといって皆が皆、釧路の隅々までを知り尽くしているわけではない。意外と自身の生活圏内の区域しか知らないのだ。

車を置いて、たくぼく循環線で

せっかくの小旅行気分、車など置いて釧路バスの「たくぼく循環線」に乗って出かけよう。

この1番線はピンポイントで各名所を回っており、料金はどこで乗っても降りても一律210円。平日も土日も1時間に1~2本ほど運行している。観光循環バスと思われがちだが、市民の足として重宝されている生活路線でもある。
なお、釧路バスは運賃後払い方式で、交通系ICは使えない。WAONカードでの支払いには対応している。バス通勤者には「何をいまさら…」な話で恐縮だが、車に慣れすぎているとバスの乗り方も忘れてしまうのですよ。

しゃも寅通りから舟見坂へ

降りた停留所は「しゃも寅通り」。
旧東栄小学校から伸びる木々の緑が、晩夏の日差しを受けて輝いている。朝の快活な木漏れ日が出迎えてくれているようだ。
横断歩道に信号はないものの、行き交う車は多くそれなりにスピードも出ているので、安全確認は怠らないように。
道を進んでいくと、しゃも寅の井戸を示す案内の石版と石川啄木の歌碑が目を引く。

住宅街の中にぽつんとある井戸

現在は井戸は閉じられており水を汲むことはかなわないが、井戸というものを実際に見たことがない世代にとっては新鮮な光景だ。どこからか流れる水の音が涼しげで、苔むした石に情緒を感じる。
普通に周囲は住宅なので、訪れる際はマナーを守りたい。

次は舟見坂へ。もちろん地図も見ているが、歩いていると看板が案内してくれる親切設計だ。
さすがの方向音痴でもすぐに舟見坂への道は見つかった。ここにも啄木の歌碑があり、緑の中に埋もれている。

深緑と青空のコントラストの中に、港を望む坂の眺望や石畳の坂道がぴたりと収まって、ここは本当に釧路なのか?と疑ってしまう景色である。

釧路人の気質にならって「なんもないよ釧路なんて…」と常日頃言ってしまう筆者だが、ここはおすすめしたい。もちろん、バスなり歩くなりで来てほしい。車で横付けするよりも、歩いてたどり着く方がこの景色には相応しい気がする。

すっかり気に入ってしまい、坂を2往復してしまった。これ以上往復すると不審者に思われるので名残惜しいながらも次に進む。

朝ラーができるくらいに鍛えて出直してきます…

道の途中でラーメンまるひらに遭遇。
徒歩で来るまるひらというのも新鮮だなあ。まだ朝の10時前だというのに客の出入りは結構ある。よーしここで朝ラーメンだ!と突き抜けられる行動力は、まだない。

展望台から眺める港町

ここまで来たからには米町展望台にも寄っていこう。

米町公園の中にある灯台をイメージした展望台のらせん階段を上っていく。
港沿いに広がる釧路の市街地を一望できるとあるが、まず目に入るのは手前に広がる倉庫や工場、クレーンの機械など。中心部はその向こうに薄く重なり、どこがどこやらよくわからない。
そもそも釧路の町自体がそんなに美しいわけでもないので、いわゆる「絶景!」という感動は少ない。
それでも、高い所から見下ろす町の眺めは少し新鮮だ。晴れた日には遠くに日高の山々まで見えるらしいが、目が悪いせいなのか確認はできず。

すぐ隣の啄木の歌碑の周りは草刈りの音がぶんぶんと唸って夏草の匂いがいっぱいに広がっていた。

ここでちょっと寄り道を。
地図を見ていて「かもめ公園」なるものを見つけてしまったのだ。ごめの目を名乗るからには、カモメ(=ごめはカモメのことです)に縁があるものにあやかっておかねばなるまい。

厳島神社を通り抜け、米町2丁目にあるその公園に向かう。坂道と直射日光で体力がごりごりと削られていくのを感じる。日傘くらい持ってくるべきだったか。
一向に公園が見える気配がなく、ついついスマホの地図アプリに頼ったところで目の前に現れた。

団地が並ぶ一角に公園はあった。
確かに、かもめ公園だ。
うん、いろいろとかもめ公園だ。
間違っても観光地ではないので、そっと立ち去ろう。
地域の人たちの憩いの場をよそ者が荒らしてはならない。

そろそろ疲れてきた。歩を進めるたびに「よいしょ、よいしょ」と小声が出る。
大通りにたどり着くと、まちなかに在るには似つかわしくない大きく荘厳な寺があちこちに見える。この一帯にはいくつもの寺社があって、バス停の名称「寺街通」がとてもしっくりとくる。

下り坂の向こうには海が見えている。
海を目指してよろよろと歩く途中でひそかに今回のメインにと目論んでいたお店を発見。

旅の醍醐味は食にあり!

午後は売り切れていることもあるのでなるべく早い時間に行きたい

詩とパンと珈琲Mon Coeur(モンクール)。2021年に札幌から釧路に移転してきたベーカリー・ブックカフェだ。
ああもうその扉を開く前からパンが焼けるいい匂いにノックアウトである。

こじんまりとした店内だが、なかなか意趣を凝らしたパンが並んでいる。店の奥にはイートインスペースもあり、先客が朝の優雅な時間をたしなんでいた。

お店の人におすすめを聞いていると、焼き上がったばかりのパンが奥から出てきた。一番人気のサババゲットだという。さ、さば…?と一瞬ひるんだが、焼きたてのいい匂いに抗えず買うことにする。
一休みの時間にして店内で食べていってもよかったが、いい天気なので歩きながら食べるのもいいだろうとテイクアウトにする。

と、思っていたのだが、歩きながら食べながらパンの写真を撮るには手の数が足りないことに気が付いた。
袋からは「今食べてよ、今だよ今!」という香ばしい匂いが叫び立てている。

どこかいい場所は、とキョロキョロしているとすぐ近くに四阿(あずまや)があるのを見つける。たんぽぽ公園という文字が見えるが、手入れされているのか不安になるほど草がぼうぼうである。その草むらを漕いで進入。どうか侵入じゃありませんように。

ふ、不法侵入じゃないよね…??

幸い四阿はまだきれいだ。ただ、わんさか虫がおられるので、あまりおすすめはできない。
ここで休憩としよう。

サババゲットはまずしっかりとしたパン生地に感動。適度な塩気とかみ応えのあるバゲット、中に詰まっているサバはグリーンカレーで味付けをしているとのことで、全然青魚特有の臭みを感じなかった。1つでお腹いっぱいになれる食事パンである。
そばの実チーズは、茹でたそばの実がパン生地に練り込んであって食感が面白い。チーズは惜しみなく使われていて、こういう上等なパンの味を知ってしまうともうコンビニのパンには戻れなくなるから困る。

感動のクロワッサン

そして最後にクロワッサンを。(なんぼ食べるんじゃい)
全粒粉入りということであまり期待はしていなかったのだが、一口かじって前言撤回をした。

なんだこのもちふわ食感はーー!
めちゃくちゃ香りがええやんけーー!

入れてくれた紙袋の下半分が染み出した油まみれになっているクロワッサンだったが、まったくしつこさがなくぺろりと食べてしまっていた。
クロワッサン=ただの油の層という認識が強く今まで敬遠していたが、思わぬ反撃を食らう。

モンクールのお姉さん、おすすめしてくださったパンは全部おいしかったです。いつか全種類制覇したいと思います。

坂を下って水平線まで

エネルギーを過剰補給したところで旅もぼちぼち締めくくろう。

坂を下るにつれ海が近くなってくる。今はもう使われていない線路の踏切が残る弁天ケ浜にたどり着く。

昔は浜辺まで行けたような気がしていたが、私有地につき立入禁止の看板が出ていたので遠くから眺めるだけにする。

釧路人にとって海は眺めるだけの一景色であり、間違っても海で泳ぐなどという習慣とは無縁だ。小さい頃から「海に入ると心臓麻痺を起こすよ!」と刷り込まれている。

水平線をしばらく眺め、空を行くカモメの群れなどをぼーっと見上げ、静かな時間を満喫した。

釧路だなあここは…と思う景色

車でなら何度か通ったことのある界隈なのに、歩いてみると知らない道や景色にずいぶんと出合った。
米町は名所を次々と巡るよりも、坂を上り、細い道を抜け、ふと水平線と目が合ったり大きな寺の屋根に驚いたり、途中のよそ見が面白い場所だと感じた。
観光案内のパンフレットには啄木の歌碑を巡るコースなど米町の楽しみ方も載っているものが多いので、ぜひ一度歩いてみていただきたい。

いい時間になったので再び循環バスに乗り込んだ。
車内の冷房がひんやりと、歩き疲れた体に染み渡った。(編集部:ごめのすけ)


ショップデータ

詩とパンと珈琲 MonCoeur (モンクール)

▽住所 釧路市米町2-3-4📍
▽電話番号 0154-65-5072
▽営業時間 10:00-16:00※完売時閉店
▽定休日 月、火曜
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