伝えたい「蔵」の記憶(485)乗降客見守る「風雪の樹」
2012年から釧路新聞・文化欄で連載された木村浩章さんの「伝えたい「蔵」の記憶」を全回数分デジタル掲載します。屋号などの特殊文字については仮名表記に修正。見出し、本文、写真につきましては掲載当時のままとさせていただきます。
2025.9.1
JR釧路駅前広場に「風雪の樹」と刻まれた石碑の傍に大きなイチイの樹が釧路駅の乗降客を見守っています。
イチイは、北海道ではオンコと呼ばれる常緑樹で姿は堂々とし材も美しく北海道の銘木と呼ばれ風格が備わった樹です。イチイの名前の由来は、仁徳天皇がこの木で笏を作らせたことからこの樹に一位を授け、イチイの名が出たとされています。

写真は、風雪の樹と命名されたJR釧路前広場に植樹されたオンコの樹です。「風雪の樹」と命名されたオンコの樹は、鉄道が新橋と横浜間を開業してから百年、釧路市の大正11年市制施行から50年を記念して、釧路市、釧鉄(JR釧路)が釧路市花いっぱい市民運動世話人会の協力により植樹されます。成長と活力を表すと言われる縁起の良いオンコの樹を「釧路駅前に名物登場・樹齢1500年知床育ちのオンコ」と昭和47年9月14日の釧路新聞が報道しています。
昭和47年、釧路駅周辺は、北大通都市改造事業の完了により、戦前からの古い商店が一新されて乙女家ホテル、旅行会社、ビジネスホテルが入居した釧正館や、旅行者と市民が交流する駅前小公園、駅前バスターミナルがオープンして道東の拠点都市釧路の玄関口に相応しい潤いと活力ある近代的街並みが誕生します。
釧路駅に植樹された知床育ちの北海道の銘木オンコの樹は、航空路の発達と自動車の増加等による移動交通、輸送手段の変化の中で、近代的な中心商店街へ変貌した北大通商店街と水揚量日本一を誇る漁業の一方で危機感を強める石炭産業など、新しい釧路の記憶を見つめます。




