伝えたい「蔵」の記憶(274)ヒブナの危機
2012年から釧路新聞・文化欄で連載された木村浩章さんの「伝えたい「蔵」の記憶」を全回数分デジタル掲載します。屋号などの特殊文字については仮名表記に修正。見出し、本文、写真につきましては掲載当時のままとさせていただきます。
2018.11.26
春採湖は、全体が市街地に囲まれながら、豊かな自然環境に恵まれて昔から市民の憩いの場として釧路市民に親しまれています。
湖面の標高が78㌢ほどしかないので、満潮時には海水が湖に逆流します。従って、春採湖は完全な淡水湖でなく海水が混じる汽水湖です。また、かつて海水で満たされた時代もあり、湖の南西の端が砂嘴(さし)で閉じられてできた海跡湖です。
春採湖は、写真の「ヒブナ」の生息地として昭和12年12月1日に国の天然記念物に指定され、湖全体が保護の対象になっています。

春採湖ヒブナ生息地に付いて「春採湖ハ上層ニ過飽和ノ酸素ヲ含ミ下層ニハ之ヲ缺(ケツ)ク珍奇ナル湖ニシテ往古ヨリ多クノ緋(ヒ)鮒(ブナ)ヲ産ス緋鮒ハ鯡ノ紅化セルモノニシテ本棲息地ハ我國有數ノモノナリ」と国指定文化財などのデーターベースに記載されています。
春採湖ヒブナ生息地の異変を伝える記事が昭和27年9月6日の北海道新聞に掲載されました。「春採湖の天然記念物に危機、緋鮒また浮き上る」のタイトルで、チャランケチャシの対岸付近で浮上したヒブナを生け捕りする人々の写真を掲載しています。前年の春も多数のヒブナが浮上しているので、今年は一層危機感が増していることを伝えています。
原因は、湖底の硫化水素や、太平洋炭砿の排水の流入による微粉炭の影響などを探っています。いずれにせよ天然記念物の保護にとって問題ですが、何か方策が無いかと、市教育課はお手上げと報道しています。
ヒブナの危機は、自然環境の悪化より生産を優先した事への警告の記憶です。




