避難所運営ゲームをやってみたら即詰んだ! ストーブ3台でどうしろと!?
防災関連の話題や記事に、必ずといっていいほど出てくる「Doはぐ」。
避難所運営ゲームと紹介されていて、学生や児童、町内会の有志らなどがテーブルを囲み、紙の上にカードを並べたり、話し合っている様子を何度も見ている。
だが、その全容がいまいち掴めない。記事を読んでも「模擬体験をした」とだけ簡素に書かれていてゲームの詳細は少ない。
ということで、
前知識ゼロのど素人が避難所運営ゲームをやってみました企画!
始める前からハードルが高い
まずは、この「Doはぐ」なるものをどうやって入手するか。
残念ながら市販、販売はなし。道内の各振興局や市町村でレンタルする必要がある。事前に申し込みが必要で、貸出期間は原則15日以内。
ただのボードゲームの延長だと思っていた浅い考えが早くも打ち砕かれる。
参加人数としては1グループ5人くらいが望ましいとのことで、編集部に声をかけ、社内にもアナウンスをして当日を待った。
…。
参加人数、(自分を入れて)2人。
防災に関する関心の低さが露呈しているのか、企画に対する冷ややかな目が突き刺さっているのか、どちらにせよ厳しい現実である。
まあ、2人なら2人でミニマムな避難所にすればいいか…とトライしてみたが、そう甘いものではなかった。
いざゲーム開始。ただの無理ゲー
進行役は防災士記者の山本氏が担ってくれた。
初めにゲームの簡単な説明を聞く。
学校を避難所に見立て、次々にやって来る避難者を教室の見取り図の上に並べていく、というもの。
避難者の事情やトラブルは1枚ずつカードに書かれていて、読み上げられるたびに「どこに案内するか」「どう対応するか」をその場で決めるのだという。目標は、発災から48時間以内に避難所の環境を整えることである。
テーブルの上いっぱいに並べられている用紙は、実際の各教室が紙に印刷されたものだ。資料の中に原紙があるのでコピーするだけでいい。
そして、カードがなんと約250枚。避難者カード、イベントカード、情報提供カードの3種類に分かれている。
一番数の多い避難者カードは、教室の用紙に対して2畳分の大きさなんだそうだ。これは実際の避難所における1人が生活するために最低限必要なスペースということ。
へーなるほどねー。

さて、始めるとしよう。
提示された初期条件は以下の通り。
- ▽冬の日曜日の日中、内陸直下型の地震が発生
- ▽天気は雪、気温マイナス2度。翌朝の最低気温予想はマイナス12度
- ▽電気、ガス、水道、下水道は使用不能。電話もつながりにくい
- ▽発電設備なし、食料なし、救護所なし
- ▽マスク30枚、携帯トイレ300回分
- ▽ポータブル石油ストーブ3台
…詰んでるじゃん!
絶望感が半端ないのは、「ストーブ3台」。
翌朝マイナス12度になるというのに、避難所にある暖房器具が3台だけってドウイウコト?!
まずは受付と本部を設置せよとの指令が出た。受付と本部の違いって?というしょーもないところにばかり気を取られる。
次に土足エリアの設定、ストーブの設置場所決め。まだ避難者は1人も来ていないのに、初手から10分以上は悩む。
とりあえず体育館にストーブ2台を配置し、避難者を案内する方針となった。
残り1台はどうするか。いや、それ以前にこんな広い学校で3台しかないのは無理だろう。運営の人間が倒れてはならんと、最後の1台は本部で確保することにした。
この先、終盤までストーブの呪いにかかったままになるとは、この時は知る由もない。

避難者が続々到着! 体育館がもういっぱい
悩む時間があと半日は欲しいところだが、そうは問屋が卸さない。
カードが読み上げられ、容赦なく避難者がやって来る。
ゲームでは記録係を決め、避難者台帳にさまざまな情報を書き込んだりチェックする仕様になっている。運営の中で体制を組み、担当を決めて動くのが本来のゲームの流れなんだろうが、いかんせん2人である。いざという災害時に必要なものは分身の術であったか、はて。
唯一の参加者に記録係を担ってもらったが、書き込むものが多すぎて大変そうだ。
さて、次々にやって来る避難者を、どこに収容するか考えなくてはならない。
家族連れはまとめて、1人の人は空いているところに。通路や動線も考えないとすし詰めになってしまう。
体育館にカードを並べていくが、思った以上にスペースがない。
しかもゲームの特性上、一筋縄ではいかない避難者が多いのである。
新型コロナウイルス感染疑いの人、乳児連れ、人工透析の患者、外国人…
単純に空いているところへ配置すればいいというわけではなく、ほかの避難者と分けるべき配慮の判断が迫られる。
正解は、ない。
イベントも次々と発生。
ごみの分別はどうする、仮設トイレが届くので設置場所を考えよ、給水タンク車が来るも下水はアウト、喫煙所はどこに設ける、必要な資材のリストアップをしておこう、食料配布問題…
さらにテレビの取材までやって来た。そんなものに対応している余裕などない、お断りだ!
次々と判断を迫られるうちに、1階は避難者で埋まりはじめ、隔離が必要な人も増えてきた。
ここでわれわれのダメっぷりを見かねた進行役の山本氏から天の声。
「本部は校長室や事務室を使った方がいいんじゃない?」
なんと!
本部用に1教室を使っていたのを空けられる、だけでなく、校長室や職員室など個人情報がたくさんあるだろう部屋を一般開放してしまうのは危ないのではないか、という管理上の問題があった。
学校という環境であることすら忘れ、目の前の問題にだけ気を取られていたのでそういう発想に至らない。
ひとまず本部を移動させ、1教室を確保。
と思ったのも束の間、避難者はまだまだやって来る。体育館はもういっぱいになりそうだ。
「もう閉鎖!避難所は受け入れストップしまーす!」
心の底からの本音が飛び出すも、華麗にスルーの刑。
こちらの都合でライフラインが回復するでもなく、地震の被害が収まるわけでもなく、避難者がいなくなるわけでもない。
これは、運営者を追い詰めるゲームなのですか…?

善意が裏目に? 判断ミスの連続で収拾不能
艱難(かんなん)はまだまだ続く。
全盲の人が盲導犬を連れてやって来た。これは確か断っちゃいけないんだったよな…。受け入れを決め、別室を確保する。
次に、大型犬を連れた避難者が来てしまった。盲導犬を受け入れてしまった以上、強く断ることもできない。こちらも聞き入れて、盲導犬と一緒の部屋に案内してしまう。
その後もペット連れの避難者が続々とやって来る。
これはかなり困ったぞ。
全員を同じように受け入れるには場所が足りない。結局、ほかのペット連れの人たちは、ペットを車内に預けてもらうことにした。
真冬の夜に、ペットは車内に置いてこいなどと言い放つ鬼畜な運営をどうぞ罵ってください。
カナリアを連れた人もいた。最初のうちは、こうした個別の要望にも「まあいいか」と対応していたのだが、これが後々自分たちの首を絞めることになる。
もちろん、盲導犬とペットでは扱いが異なる。
問題は、それぞれにどう対応するか最初に方針を決めていなかったことにある。
目の前の困った人を何とかしてあげたい。しかし、その場の判断で特例を重ねていくと、後から来た人にはどう説明するのか。ああもう逃げ出したい。
避難所運営って、こんなに難しいのか!

さらにバスに乗った中国人観光客のご一行15人が到着。言葉が通じない、15人をまとめる場所がない、そもそもどう案内すればいいのだ?!…そのままバスで待機してもらう。
保護者のいない子どもがやって来た。どうすればいいのかわからない。
発熱者、メンタルケアが必要な人、聴覚障害者、クレーム対応、次から次へと難問ばかりでこちらも次第に投げやりになっていく。
そんな中、キャンピングカー3台を手配というイベントが発生。
本来ならありがたい話のはずなのに、公平性はどうなる?という疑問が湧いてしまい、断ってしまった。
キャンピングカーを使える人と使えない人が出たら不平等ではないか。誰に割り当てるのがベストなのか?来てもらったところで使い途がわからない。
物資や資材の提供など、救援につながるイベントも続々と発生する。ところが、目の前の対応に追われ、届いた支援をどう生かすかにまで手も頭も回らない。
ちょっとタイム!と、ゲームならば中断して立て直しもできるんだろうが、本番ではかなわない現実である。
そもそもゲームでも、2人しかいないのだからタイム休憩を取ったところで意味はないのだが。
なんとか1日目の夜を越し、2日目の日中へ。
ゲームは、発災後48時間以内に避難所の環境を整えることを目標としている。とりあえずこの2日目を乗り切ればいいのだ!(やけっぱち)
飽和状態の1階から2、3階へと健常そうな世帯や個人を移す。元気な人は早めに移した方がいいよとまたしても天の声。
ストーブについては完全に棚上げ状態で、「日中なら暖房なくてもいけるよね!」と無責任思考に走る。マジで、もう暖房とか考えてられないす。
とにかくてんやわんやな避難所。
もう無理!しか言わない運営スタッフ。
ここで時間切れとなった。
かなりの駆け足だったにしろ、3時間以上はプレイした。
答え合わせで発覚、そもそも考え方の違い
ゲーム終了後は進行役の山本記者と反省会である。
まず指摘されたのが、体育館の使い方。
われわれは避難所と聞いて、最初から体育館に避難者を収容するものだと思い込んでいる。なぜなら、メディアでそういった事例しか見たことがないから。
しかし、必ずしもそうする必要はないという山本氏。
例えば、体育館は食事を取るためのスペースや、特別な配慮が必要な人たちのための場所として確保し、ほかの教室をうまく使い分ける方法もある。
考えてみれば、学校にはたくさんの教室がある。ところが、体育館に入らなくなった時点で「もう受け入れストップ!」と宣言しようとしたのは視野が狭い証拠だろう。

続いてずっと頭を悩ませたペット問題。
最初からペット用の部屋を2室ほど、できれば角部屋に確保しておくとよいとのこと。そうしておけば、受け入れるたびに右往左往しなくて済む。
実際にはアレルギーへの配慮や衛生管理なども必要になるだろうが、少なくとも場当たり的に決めるよりは、ずっと対応しやすい。
そして、最大の懸案事項だったストーブ3台問題である。
…いうてポータブルストーブよ?
だだっ広い体育館に2台設置したところで、どれほどの暖房効果が得られるというのか。逆にストーブ前の陣取り合戦が勃発しかねない。
それならば、患者用の部屋や採暖室など、暖かく過ごせる場所を限定して設けた方が効果的ではないか、とのこと。
さらに、少し状況が落ち着けば避難者の中からポータブルストーブを持ち寄ってもらえる可能性もある。救援物資のリストに申請もできる。
そ、そういう手があったか!
限られた物資をどう使うか、どうやって増やすか。そういう発想がまるでなかったことをとくと反省。
序盤で悩みすぎたことも反省点かもしれない。
最初からすべての問題を想定し、完璧な配置を決めようとしていた。ところが実際には、時間の経過とともに必要なものも、使えるものも、避難者の状況も変わっていく。
最初に決めたことに固執せず、その都度見直していく柔軟さも必要ではないだろうか。
一方で、ペットの受け入れなど、初めにきちんと方針を決めておくべきこともある。
早く決めるべきことと、状況を見ながら変えていくべきこと。その見極めの難しさよ。
言うだけなら簡単ではあるが、あの混乱と焦燥の中でそれができる自信はひとつもない。
避難所はホテルじゃない
今回のゲームで痛感したのは、避難所を運営する大変さであるとともに、避難所はホテルではないということ。
あれをしてほしい、これを何とかしてほしい。要求は山ほどあるだろうが、非常時であることを忘れてはならない。
普段から防災意識の「ぼ」の字もなく、非常用持ち出しリュックの準備を「いつかそのうち」と言いながら10年以上が経過している筆者である。恥ずかしながら、着の身着のまま、何の準備もなく「避難所に行けば何とかしてくれるだろう」という甘い気持ちでいた。
…とんでもない。
避難所の運営は地域の有志が主体となる「自主運営」なのだとも今回初めて知った。てっきり行政の管轄で運営チームがあるのだろうと勝手に思っていた。
…とんでもない!
避難者は決してお客様なんかではない。運営しているのも同じく被災した人たちなのだ。誰かが何とかしてくれるだろう、ではなく、自分に何ができるかを考える必要があることを知った。
初回だから仕方ないにしろ、あまりにモヤっとする結果で終わった「Doはぐ」。
これは2周目以降が真骨頂となるゲームなのではないか。
もうストーブ3台の呪いにかかることはないはずだ。(編集部:ごめのすけ)
「Doはぐ」についてはこちらから




